迅速果断 エース魚谷侑未が魅せる 強さの証【Mリーグ2023-24観戦記 1/25】担当記者 #後藤哲冶

見事【3ソウ】【6ソウ】【9ソウ】待ちのリーチへたどり着き、これをツモ。
2600オールの加点で、トップ目へ立った。

そうして迎えるのが、冒頭で紹介した、東4局3本場のシーン。

寿人のリーチに対して、現物が1枚も無い。
アガリには遠く、形が悪い。
持ってきたのはドラの【1ソウ】

魚谷はここでも、静かに、そして迅速に。

【1ピン】を切った。
そしてそこから、魚谷の覚悟の打牌が続く。

通っていない【2ピン】に続いては、これもまた通っていない【8ソウ】切り。
ようやくここで、実況解説が「真っすぐ行ってるんだ」と気付いた。
それほどまでに、魚谷の選択に迷いがなかったのだ。

ただ真っすぐに、自分の手を前へ進めていく。
この状況下ではそうすることが、自分にとれる最善手だと知っているから。

【3マン】を引いて、手が進む。
ここで、もう一度魚谷に選択。
もちろん真っすぐ打つのは【1ソウ】だが、それはドラ。
カン【6ピン】も簡単にアガれる形ではない、と思えば、ここで【5ピン】【7ピン】を打つ選択肢もあっただろう。

それでも、魚谷はドラの【1ソウ】を河に放った。
ドラとはいえ、序盤に切れている【3ソウ】の外側牌。純粋な放銃率だけでいえば、決して高くはない。
分かっていても、そう簡単に打ち出せる牌ではないが、魚谷ならできる。

結局、この局は当たり牌の【7ピン】単騎から、【3マン】【6マン】【9マン】待ちに変化、【7ピン】をリーチ宣言牌で打ち出しての8000点放銃となってしまった。

放銃してしまうなら、道中どうなろうが同じでは? と思うかもしれないが、それは全く違う。
仮に、【1ソウ】を切ったところで、【7ピン】を打っていたらそこでこの局は終わっていた。
しかし、【1ソウ】を切ったことで、そこからの数巡、【7ピン】を引いてテンパイをする抽選が受けられた。
更に【7ピン】単騎テンパイになったあと、そのまま2枚残っていた【7ピン】をツモる抽選も受けることができた。

いわば、魚谷の選択は自分が良い恩恵を受けられるかもしれない未来を、最大限まで拡張したのだ。

点数申告をされた返事の「はい」という言葉が、力強かった。
この選択に、後悔はない。

なら、今はただひたすらに、前へ。

南2局

魚谷に、先制テンパイが入った。
カン【3ソウ】待ちの、リーチドラ1。
ペンチャンという形は、良い形に変化しにくく、また、【8ピン】を引いたことで567三色への変化も少なくなったことで、即リーチしそうな牌姿。

しかし魚谷の選択は、テンパイ外し、だった。
ソーズ下の情報がほとんどなく、これで勝負するのは苦しいと判断。
マンズのくっつきに託す。

【7マン】を引いて、カン【6マン】のテンパイ。
中ぶくれになっている【6ソウ】はくっつきに優秀に見えるが、【5ソウ】を切っているのでフリテンになる可能性が高い。

ここは、テンパイをとっての役無しダマテンを選択。
ツモならアガれる上、【2ピン】【5ピン】引きで三色変化が残る。終盤に差し掛かれば、【2ピン】【5ピン】チーしての役アリカン【6マン】に受けることも可能だ。

三色変化ではないが、【6マン】のツモアガリ。
ツモドラ1で500、1000の加点――

思考時間は挟まなかった。

【6マン】をツモった次の瞬間。
魚谷が手に持った【8ピン】は、横を向いた。

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