迅速果断
エース魚谷侑未が魅せる
強さの証
文・後藤哲冶【木曜担当ライター】2024年1月25日
魚谷侑未はひとり、静かに考える。
寿人からのリーチが入って、安全牌が1枚もない。
かといって、自分はとてもアガれる形ではなく、打点的魅力もない。
トップ目に立てた今の状況。放銃はもちろんしたくない。
更には持ってきたのは、ドラのときた。
全ての状況を観察して。
実況解説もついてこれないほどの、ほんの僅かな時間だけ使って。
苦しむセガサミーフェニックスの、エース魚谷侑未はこの時既に――
覚悟を決めていた。
1月26日 第2試合
東家 佐々木寿人 (KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家 鈴木大介 (BEAST Japanext)
西家 渡辺太 (赤坂ドリブンズ)
北家 魚谷侑未 (セガサミーフェニックス)
東1局
魔王の襲来は、いつだって唐突だ。
絶好のカン引いてのイーペーコー完成テンパイ。
を切っている+が赤含みな分、を切ってのイーシャンテン戻しこそしなさそうだが、打点は7700点が確定していることもあり、ダマテンに構えるのはありそうな局面。
しかし上記画像を見てもらえば分かるように、私のそんな考察などどうでも良いかのように。
寿人は寸分の迷いもなく牌をぶん曲げた。
これに飛び込んでしまったのが、西家に座る太だった。
不運にも、寿人のリーチにが通ってしまったのだ。
は現物だが、を切ればタンヤオがある。
の切り出しでを先に切る選択肢こそあったかもしれないが、この放銃自体は免れないか。
12000の加点で、まずは寿人がリードを握る。
その後大介が2000、4000をアガって東2局。
魚谷は、この牌姿からを切った。
いらない字牌なんだか、切るでしょ、と思われた方もいるかもしれないが、事はそう簡単ではない。
カンを引いたことで形こそ引き締まったが、まだアガリには遠く、字牌を切って目一杯とはしにくい手牌だ。
役牌重なりも見たく、なによりも、の形がくっつきの受けとして被っている。辺りを切る打ち手が、むしろ一般的かもしれない。
だが、魚谷は全体を冷静に見ていた。
河に字牌が高すぎるのだ。
ホンイツに向かっているかどうかまでは断定できないが、とにかく、これで全員が字牌を持っていないことなどほぼありえない。
つまり、この手に字牌を残していても、安全では全くなく、自分が重ねたとしても、簡単に出てくる牌ではないということだ。
だからこそ、魚谷は連続でと切り飛ばす。
細かいが、この辺りの判断もぬかりないからこそ、魚谷は強い。
当然だが、字牌は常に安全な牌なわけではないのだ。
この局は残したも使い切り、1人テンパイを勝ち取る。
東4局
親番を迎えても、魚谷の鋭い打牌は続く。
を引いて、ドラの北切り。
もうドラの字牌を置いておけるスペースは無くなった。
理屈で言えばわかるが、それを迅速果断にできるのは純粋な鍛錬の結果だ。