3万半荘から導き出した70秒間の思考【Mリーグ2023-24観戦記 3/8 萩原聖人 VS 渡辺太 VS 高宮まり VS 松ヶ瀬隆弥】担当記者 小林正和

フィナーレはこの男が飾る。

“ふとっしー”こと
渡辺太の登場だ。

しかし少し口元に手を当てる困惑した表情をしている。
一体どうしたと言うのだろうか。

その仕草にさせている正体はこちらに隠されていた。

南4局

冒頭の萩原からのリーチを受けた一コマ。

ツモ【5マン】でテンパイであり、切り出される牌は現物の【2マン】である。

その状況で手が止まる理由は…
一つしかない。

“リーチ”or“ヤミテン”

の判断を強いられているのだ。

トップ目の松ヶ瀬とは2,600点差。
つまりリーチした場合、全てのロンアガリは供託を足して単独トップ。
ところがヤミテンの場合、萩原・高宮から出た場合は同点トップのままという悩ましい状況。

そんな良問すぎる点数状況に終盤の条件戦が加わり更に複雑化へ。
太は自身のYouTubeにおいて、そのリーチ判断の難しさを言葉で言語化していた。
(※すべては羅列できないので全て気になる方は配信動画をご覧ください。)

悩ましいポイントは以下の通り。

① リーチすると出アガリ無条件でトップだが、流局時二人テンパイだと松ヶ瀬がトップで終了してしまう。
② 雷電はチーム状況的に松ヶ瀬のトップを阻止したいはず。テンパイ宣言する事で自身に協力してくれるかも。
③ 萩原から【4ピン】もツモ切られそうだ。
④ 高宮は萩原に跳満以上はラスになってしまうので、二件リーチに挟まれたら自分に甘く打ってくれるかも。
⑤ 松ヶ瀬は今現在【7ピン】を持っていなさそうで、ヤミテンの効果が薄い。

過去の何十万局もの対局データを頭の中で呼び起こし、整理するまでに掛かった時間はおよそ70秒。

特に④と⑤の理由を太は評価し、

導き出した答えは

“リーチ”

であった。

ここからは4者の入り混じった複雑な心境を牌が代弁していく。

連投の高宮か
黒沢の悔しい思いを胸に意地を見せる萩原か
完全復活、松ヶ瀬の逃げ切りか

そして、遂に一つの答えに辿り着いた。

萩原が【4ピン】を掴み太へ放銃。

リーチ・タンヤオ
2,600(+1,000)

その瞬間、グリーンのネオン色はスタジオを彩ると同時にデイリーダブルを祝福するのであった。

しかし

季節外れのなごり雪が降る中、
ドリブンズたろうからバトンを受け継いだ太という男。

本当に
この選択で良かったのだろうか…。

トップが決まった瞬間でも、なごり惜しそうに何かを見つめていたのが印象的であった。

一方で黒沢からのバトンを受け取った萩原。
最後はセミファイナルへの扉を閉ざさせない、風林火山のトップを阻止する魂の放銃にも見えたのは個人的な感想。

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