皆の明日を、想うから　貫く矜持　#萩原聖人 とMリーグ【Mリーグ2023-24観戦記 3/21】担当記者 #後藤哲冶

園田のツモアガリ。300、500。
ただまだ点差が小さく、魚谷からしてもトップが狙える圏内なのが救いか。

南４局

オーラス、トップを獲る為なんとしてもアガリが欲しい萩原に、難しい手牌が入った。
形はを切りたいが、ドラ。少しでも打点が欲しいだけに、おいそれとは切りにくい。

「最後まで、難しい選択させやがって」

萩原がまた、そんな苦い笑みを見せた。

萩原が熟考の末選んだのは、だった。
トイツ手を強く見ながら、を引いた時はタンヤオで戻ってこれるように、受けがあるを外したイメージだろうか。
ロスは大きいが、打点の種は残しつつ、手役を最大限見た萩原らしい一打と言えるかもしれない。

を引いたところで、一気にチートイツへ舵を切った。
を切ったあの瞬間から、もう一つ対子ができたらチートイツに決めることは想定していたのかもしれない。
単騎に良さそうな所は残して、中張牌のに手をかける。

先制テンパイは菅原だった。
を暗刻にしてのテンパイは、待ちのドラ１テンパイ。
満貫をツモっても着順が上がらない菅原からすると、あまり歓迎できないテンパイだが、チーム状況上オリない魚谷や萩原からの直撃もある。
ここはリーチへ。

今期のフェニックスの噛み合わなさを象徴するかのように……菅原のリーチ直後、魚谷にテンパイが入った。
余るのは……当たり牌の、。

魚谷のリーチ宣言の直後に。
フェニックスと雷電の夢が遠のく、ロンの声が響いた。

園田が東場の効果的なアガリを活かし、後半は流石のゲームメイクで、トップを獲得。

オーラスのアガリで、菅原が魚谷をかわして３着に。
BEASTとしては風林火山にこれ以上離されないためにも、大きな着順浮上。

対して、フェニックスと雷電は更に厳しい状況に追い込まれた。
麻雀という競技の性質上、親番さえあれば可能性が０になることはないが、それでも現実的な可能性で言うと、ほぼ０に近い確率になってしまったのは間違いない。

それでも、試合後萩原のインタビューは決して暗いものではなかった。

「俺がここで、暗い顔してごめんとか、すいませんとか、言ったところで、皆の明日が楽しくなるわけじゃないんで」
「今日も、応援してくれて、本当にありがとう」

麻雀という競技は、ままならない。
不運に振り回され、思うような結果が出せないことは、誰にだってある。
けれど、そんな中でも、自分が全力で戦う姿を、魅せることがMリーガーとしての仕事であると、萩原は知っているから。

今までだって、そうだった。Mリーグの舞台で戦い続けて、苦しいことばかりで。それでも一度たりとも、萩原聖人は俯かなかった。真っすぐに、前だけを向き続けた。
そんな姿に、きっとファンは心惹かれるのだろう。

今年も、どうか最後まで。
その勇姿を目に焼き付けて欲しい。