そして寿人と2着-4着の並びを作り、そのまま試合を終えられれば、順位点の40ポイント差でABEMASが麻雀格闘倶楽部をかわして4位に浮上する。松本は、そのチャンスを逃したくなかったのだ。
絶対に。
解説の朝倉康心は、このプレーを「犠打のよう」と評した。
自らの栄誉の可能性を犠牲にし、チームにとっての最善を尽くそうとする、滅私の選択。
松本が何に一番重きをおいているか、よく伝わってくる。
南4局は岡田から2000点を出アガリ。
狙い通りの並びで試合を終えた。
松本はチームから「MVPを狙ってこい」と送り出されたという。であればトップを狙ってわがままに打ち、多少大振りになったとしても、チームからとがめられるようなことはないはずだ。しかし、それでも松本は個よりチームを優先した。
もちろんMVPをはじめとする個人タイトルは素晴らしい栄誉であり、全選手が狙っているだろう。チームも可能性がある限り、それを後押しする。ファンだって、推しの選手がタイトルを獲ればうれしいはずだ。
だが選手たちはあくまで、個人の栄光よりもチームでつかむ栄冠を目指して戦う。それこそがチーム戦であるMリーグの醍醐味であり、その志は尊い。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。