渡辺太　シンギュラリティの風は　ドリブンズの逆境を打ち砕くか【Mリーグ2023-24ファイナル観戦記 5/9】担当記者 #後藤哲冶

そしてなんと、これを一発でツモ……！
リーチ一発ツモ、三暗刻ドラでまさかまさかの6000オール。
軍師勝又の重すぎる一撃が、三者を襲う。
これでこの半荘の行方はまったくわからなくなったと言って良い。

太の表情に、変化は見られない。
けれど、確実に聞こえているはずだ。後ろに迫って来る、強者達の足音が。
このファイナルという舞台で、それはあまりにも大きなプレッシャーとなって太に襲い掛かっている。

勝又は続く１本場でも３人テンパイをかいくぐって2000オールの加点。これで、太との点差は……6900点。

勝又が更に畳みかける。
赤を２枚従えてのリーチは……トップに手をかけるリーチ。
ツモれば、文句なく逆転だ。

これに対して太が一発でダイレクトのスジであるを押した。
もう、これ以上ただ見ていることなんてできない。
トップをとるために、この猛追してくる圧倒的強者達を相手に、守っているだけではトップは取れない。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
太はこの戦いの中に身を投じることを選んだ。

太が追い付いた……！
待ちは。勝負――！

肌を焼く緊張感が、その場を支配している。
ファイナルの、緊張感。風林火山も、ドリブンズも。もう一戦だって落とすことはできない。
この勝負の行方は――

太がなんとか制して。
貴重なドリブンズファイナル初トップを、獲得したのだった。

南２局のアガリの後、南３局もリーチに出た太だったが、瑞原の追っかけリーチに放銃してしまい、最後までギリギリの展開だった。
南４局は勝又が２着に上がるアガリになったため、なんとかトップを死守。

対局が終わった瞬間、太は心からの安堵を噛み締めていた。

太は、麻雀ＡＩにその打牌選択を参考にされるほど、ネット麻雀に傾倒し、極めてきた雀士。
そんな中で幾度となくトップを重ねてきたはずのそんな太であっても、この一回のトップがこんなにも遠い。

それでも、太はたどり着いて見せた。
この錚々たるメンバーを相手に攻撃的な姿勢を貫いてもぎ取ったトップ。

新加入の渡辺太が巻き起こすシンギュラリティの風が、今確かにドリブンズを導いている。