チームへの「責任」〜鈴木たろう、苦渋の和了【Mリーグ2023-24ファイナル観戦記 5/17】担当記者 千嶋辰治

そんな中、カンさえ引ければ… という手牌をもらった。

そして、2巡目。

あっという間にイーシャンテン。

ここで手放したが後のドラマの布石となる。
次巡、

先ほど手放したが激痛。
リャンペーコー含みのハネ満コースが遠ざかっていく。

しかし、リカバリーを狙うたろうはほぼノータイムで、

マンズの両面ターツを切り飛ばしていく。
安めを引いてしまえば条件を達するには及ばないのはそのとおりなのだが、に手をかけた手筋に解説席からは感嘆の声が漏れている。

ゼウスの目には何が見えていたのか？

これが見えていたのか… を引き入れてテンパイ。
2巡目のが大変に悔やまれる格好となってしまったが、ツモなら文句なし。亜樹か優からの出和了りならラスから脱出できる。

たろうは、少し間を置いてドラを切ってヤミテンに構えた。

優がこれを叩いてプレッシャーをかけるが、たろうは静かに押していく。

たろうがを河に置いたとき、岡田の動きが止まった。

岡田の手はこうだ。

をチーすると、バックと一気通貫を天秤にかけたイーシャンテンにできる。
ドラ切り以降、不穏な空気をまとわせてツモ切りを続けるたろうの空気に反応したのか…。

それとも。

執念の熱に当てられたか。

捌きに行った岡田。
切り出されたに、たろうの手が倒される。

タンヤオイーペーコー赤は5,200点。
これでは逆転は不可能。
しかし、たろうは逡巡することなく和了の意思を示した。

これにより、放銃した岡田は3着になり、トップとなったのは…

状況が飲み込めないような表情で座る鈴木優！
なんと25,600点持ちのトップは歴代最少スコアのおまけ付きだ。

「今日の目標は何段階もあって、（オーラスの和了は）その中での最低限の仕事。切りの選択はタンヤオの変化を見込んだものだったが、結果がああなってしまった以上リーチも打ちにくい。両面に変化すればリーチだが、その前にが出たら状況次第で出和了ることにした。」

トップを優に預けることで、追いすがるサクラナイツと風林火山のポイント差を詰めさせない選択。
あるいは振り切ったという評価がふさわしいゲームだったのだが、たろうの表情は全く冴えない。

「『ラスはラス和了り』は非常に屈辱的なこと。ただ、チームの状況からすると（岡田からの出和了りは）目標に近づいた選択になるのかな。」

と、自らを納得させるように語るたろう。

「悔しいラスを受け入れた。」

この試合に登板した「責任」が、この一言に凝縮されている。

さて、2位のポジションを死守したドリブンズ。

その結果、風林火山とサクラナイツが着順勝負に。
このわずかな差に「一千万円」という途方もない金額が積まれている。

最後の最後まで、今シーズンも目が離せない。