【 #神域リーグ2024 第16試合観戦記】#える が、悔しさに拳を固く握った 負けるのが“仕方ない”だなんて、思いたくないから【文 #後藤哲冶 】

良い判断だと思う。
正直、このまま普通に打っていても、える自身の着順上昇はもう厳しい。
では、無理にでも役満を狙った方が良いのかというと、そうではない。
神域リーグはリーグ戦だ。着順上昇は厳しくても、少しでも素点を稼ぎ、ポイントを持ち帰った方が良い。
ドラの【白】は同じ牌を持ってこないといけないが、【3ソウ】【5マン】はくっつきが広い。ここは手広くうけるのが正解だろう。

待ちはカン【4マン】ではあるものの、タンヤオで赤を1枚使ったテンパイ。
ツモれば8000点からの勝負手。当然えるはリーチを打つ。

が、これも実らない。追いかけリーチを敢行してきた親番渋川が【7ピン】のツモアガリ。
4000オールのツモられで、またしても点棒が減っていく。

南4局

少しでも、点棒を持ち帰りたい。
1回で良いから、アガリを手にしたい。
その一心で、えるは手を組む。ここも、ダブ【南】を活かしたアガリを目指し、チートイツではなくメンツ手に舵を切った。

少し時間はかかったものの、ドラの【9ソウ】を引き入れてテンパイ。ここも当然のリーチだ。
これならば、ダブ南でアガれば8000点から。
この半荘一度もできなかった、最後の、加点チャンス。

なかなかツモれないまま、局は最終盤。
この半荘暴れ回った、渋川と松本から追いかけリーチが入る。

この時、山に残っている枚数で言えば、えるが圧倒的だった。
松本の待ちはもう既に山に無く、渋川の待ちは、1枚だけ。対して、えるの待ちは3枚残っていた。
3対0対1の、めくり合い。
麻雀という競技は、難しい。どれだけ正しい選択を辿っても、それが、良い結果に繋がるとは限らず。

結果が、どれだけ残酷なものだとしても。
ただそれを受け入れることしか、できないのだ。

トップに松本、そして2着に渋川と。
トッププロ2人が遺憾なくその実力を発揮し、暴れ回った第1試合。

それを見ていることしかできなかった、空星が、3着。
好配牌と呼べる手は全く入らず、ひたすら耐える展開が続いてしまった印象だった。

そして、ハコ下3万点を超える4着となってしまったのが、える。

対局が終わった直後、えるは、大きく息を吐いた後、自身の心中を吐露してくれた。

「プロだから、仕方ないとか。あるかもしれないけど。でもそういうのは分かった上でドラフトから参加してるから」

「プロ相手だからしょうがないとかで、この悔しさは収まらない」

プロ相手でも、結果を残している選手だっている。
今日数多くの局で、自分の手が良かったことが分かるからこそ、悔しい。

「――勝たなきゃいけなかった」

強く言い切ったその言葉は、えるの覚悟そのもの。

インタビューを終え、控室に戻ると、チームメイトと監督が温かく迎え入れてくれた。

「えるえる、実は私より上(こん凹)」
「おいおいえるなにやってくれてんだよ~」

安易な励ましだけでなく、ちゃっかり弄ってくれるのがアキレスの良さ。

「何か所かアドバイスあるんで、また牌譜検討しよう」

麻雀界の最速最強、多井隆晴の頼もしすぎる言葉を受けて。固く拳を握った、えるが応えた。

「おねがいします……!」

――今日の悔しさは、忘れない。

今宵の悔しさをバネに、えるが誓う。
どんな状況でも、どんな相手でも。

次に帰ってくるときは、笑顔で。

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