【 #神域リーグ2024 第22試合観戦記】#歌衣メイカ が噛み締めた勝利の味 これは“識った”漢の、浪漫譚【文 #後藤哲冶 】

【6ソウ】4枚見えか、【8ソウ】は当たらない」

一転窮地に立たされた歌衣だったが、冷静に場を見渡していた。
【6ソウ】が4枚見えているいわゆるノーチャンスになっており、リャンメンやカンチャンを構成しにくくなっている。
いざとなったら【8ソウ】を切ってオリは、十分ある選択肢だ。

ギリギリでテンパイを取り続けてきた歌衣に、最後の試練が舞い込む。
【赤5ソウ】だ。

【2ソウ】【5ソウ】の線はない、【5ソウ】【8ソウ】の線も。【5ソウ】のシャボ(シャンポン)だけ」

時間をギリギリまで使って、歌衣が思考の海に沈む。
今まで費やしてきた研鑽の全てが、歌衣の頭を巡る。

そうして、歌衣が持ち時間を使い切って出した答えは――

「行こう」

押し、だった。
そう、歌衣の言葉通り、この【5ソウ】はほとんどのケースでリーチ者2人に当たらない。
【2ソウ】が2人とも通っており、【6ソウ】4枚見えで【5ソウ】【8ソウ】で当たるケースが消滅。同じくカン【5ソウ】も無く、当たるなら単騎かシャンポンのみ。

麻雀は、正しい打牌をすれば勝てる競技ではない。
が、こうして正しい打牌を模索し、繰り返せば。

時折訪れる幸運を、迎え入れる事ができるのだ。

4着となってしまったルイスキャミ―と、3着になった長尾が、インタビューで連投を宣言。
なんと第2試合も全員連投で、同じ顔触れでの対局となった。
2人はこの第1試合のリベンジを成すことができるか。

トップに、歌衣メイカ。

歌衣は今シーズンの初戦となった、第1節の試合時。
【3マン】のノーチャンスに気が付くことができず、アガリを逃してしまった。
トップこそとれたものの、「押せる牌を押しきれなかった」ことは、歌衣にとって悔しい事実に変わりない。

「この【2マン】は……学びとしよう」

剛毅で明朗快活なアニキは、麻雀に対して人一倍真摯だった。

そして今日、あの赤【赤5ソウ】が手に来た時。
ほとんどのケースで当たらないことを理解し、押し切った先に待っていた赤5pでアガった時。
そこには格別の喜びが待っていた。

「くう~! 頑張って良かったァ……!」

歌衣が噛み締める、トップの味。
それはきっと、初年度のあの時と、一味違う。

麻雀の楽しさを知った日から、それを優に超える程の苦しみも味わった。
上手くいかず、勝てない日々も続いた。
それでも歌衣は、時に監督や強者に教えを乞い、必死に麻雀の勉強を続けてきた。

そしてこれからも、歌衣の学びは続いていくだろう。
学びが活きるという、この最高の喜びを、身体が脳が、覚えている限り。

これは、酸いも甘いも嚙み分けて――
麻雀を“識った”漢の浪漫譚なのだから。

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