大きな悔しさと少しの手応えを胸に 中田花奈の成長物語、第2章の幕開け【Mリーグ2024-25観戦記 9/17】担当記者 #東川亮

もちろんそれが良い結果につながることもあるが、今回は裏目に出た。伊達がいつもの手つきで力強くリーチを放つ。柔軟な【南】のトイツ落としからツモの流れをつかみ、悪形から解消しての【3ピン】【6ピン】待ち。中田の残した【3ピン】が捕まった。

それでもシャンポン受けから埋まれば反撃チャンスだったものの、中田の元に来たのは【2マン】。必然的に【3ピン】が押し出される。

リーチ赤、裏は乗らず2600。

中田のMリーグ2024-25シーズンは、自身の放銃で幕を開けた。もちろん、アガれないどころか放銃となったのは結果としては痛い。ただ、しっかりと攻める意思を貫いての放銃だけに、本人のなかにそこまで後悔はなかったのではないだろうか。

その後は茅森・白鳥と満貫をツモり、中田一人にアガリがないまま、試合は南場へと進む。

迎えた南1局の親番で、中田に大物手の気配が漂う手が入った。配牌で手牌にマンズが10枚、清一色を決めれば戦局は一変する。中田は2巡目にできたソーズのリャンメンターツを拒否し、大物手一本に照準を絞った。ソーズメンツができたとしても門前勝負、リーチピンフ止まりになる未来も十分あり得る。それであれば思い切って高打点に振り切ろうという判断。

すんなりマンズが引ければ話は早いのだが、しかしそのマンズが1枚も引けない。

そこへ伊達がマンズを切ってくる。手の内は鳴いて良し、門前でも良し、ドラドラで打点の担保もあり、マンズを切るに見合う手だ。

中田はチー、愚形が一つ解消されるが、それでも伊達の手と比べると見劣りしてしまう。

結局、中田がテンパイする前に茅森・伊達のリーチがぶつかる形となり、伊達がツモって3000-6000。

次局も伊達が愚形リーチを力強くツモって2000-4000、連続の高打点で大きくリードを広げ、そのままトップを獲得した。

この試合の中田は、最後まで手牌とツモに恵まれなかった。象徴的だったのがオーラスだ。先制テンパイのカン【3ピン】待ちでリーチ。ドラのカンチャン待ちは決して良いとは言えない、むしろアガリを考えると悪い待ちだが、ツモって一発か裏が絡めば1着順アップで試合を終えることができる。

だが、肝心のドラ【3ピン】は何とこの時点で4枚とも白鳥の手中。よもやの暗槓はあれど、まず切られる牌ではない。今シーズンから実装された待ち牌枚数表示が、中田の希望を薄暗く染める。

この局は最終的に茅森がアガって2着をキープ、中田は初戦を4着で終えることとなった。

中田は悔しさを隠そうとはしないながらも、ファンへのコメントを求められたときには「私の昨年と変わった部分も見ていただけたかと思います」と気丈に語った。アガリはなく、もちろん結果も出なかったが、それでも彼女にとっては何かを変えよう、何かを見せようと意気込んだ一戦であり、それが少なからず果たされていた実感もあっての言葉だろう。

正直、展開的にはかなり厳しい試合だったのは確かだ。しかし、反省すべき点がなかったわけではない。試合後には控え室に戻るなり、チームメートの鈴木大介からは局面に関する指摘があった。

東1局に手拍子で切ってしまった【2ソウ】は234、345両方の三色を残す意味でキープしておきたかった牌ではあるし、

南2局【4マン】【4ソウ】のシャンポン待ちテンパイは、役ありとは言えこのままアガる価値が低いこと、【6ソウ】4枚見えに【赤5ソウ】も切れていて【4ソウ】の場況がいいこと、巡目が深く都合のいい変化からアガリまでつながる期待が薄いことから、即リーチの判断が良かった、という点だ。

中田は他のMリーガーに比べると、プロキャリアも、雀歴も浅い。まだ発展途上であり、最高峰の舞台であるMリーグにふさわしくないのでは、という声もあるだろう。ただ、それでも彼女はここにいて、戦っている。自分のため、チームのため、応援してくれる人たちのために、今できる最善を尽くし、結果を出そうともがいている。そして、そんな彼女にしか描けないストーリーが、そこにはあるはずだ。

中田花奈の成長物語、第2章。

彼女がどんな道のりを歩むのか、ファンの方々には厳しくも温かく、そして楽しみながら見守っていただきたい。

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