天に届いた右手
文・宮水さくら【木曜担当ライター】2025年10月16日
第1試合

東家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
南家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:鈴木大介(BEAST X)

静かな緊張の中、佐々木寿人が卓についた。
その表情には、いつものような闘志とともに、どこか遠くを見つめるような深い想いが宿っていた。
10月12日、寿人にとって、麻雀プロ人生の原点でもあった前原雄大がこの世を去った。
寿人にとって、その知らせは突然すぎるものだった。
共に戦い、笑い、叱られ、そして支えられた26年。
「あなたがいなければ、今の自分はいない」
そう言い切るほどに、前原は彼の麻雀にも人生にも大きな影響を与えた存在だった。
静まり返ったスタジオに、打牌の音もまだ響かない。
対局開始のわずかな前、選手たちはゆっくりと目を瞑る。
前原雄大の名が読み上げられると、寿人は深く目を閉じたまま、何かを思い出している様だった。
その姿には、悲しみでも悔しさでもなく、「受け継ぐ」という覚悟が滲んでいた。
前原が生前に残した言葉
「寿人からは本当に学ぶことが多かった。生まれ変わったら寿人のように生きたい。」
その想いを胸に、寿人は今日、再び卓に向かう。
もう隣に立つことはできない。
けれど、あの背中から教わった“攻めることの意味”は、今も胸の奥で生き続けている。
勝負の舞台で涙は見せない。だが、打牌の一つひとつに、前原への感謝と敬意が込められていた。
“麻雀に生きる”
その教えを体現するように、今日の佐々木寿人は誰よりも静かで、そして誰よりも強かった。
東2局
大介が自風のを仕掛け、
のシャンポン待ちでテンパイ。
一方、親の寿人もすぐに追いつく。
を引き入れ、
待ちでリーチ。

このリーチに一発のタイミングで大介がを引く。
を勝負すれば、待ちは
に変化する。
寿人のリーチに対し、大介はを勝負。

東3局
寿人の親番が回ってきた。
大介がをアンカンし、新ドラは
。

リーチドラ1の愚形ではあるものの、カンも入っており、親だったことがリーチを後押ししたか。
ここで一度アガって流れを掴みたい所だったが、結果は一人テンパイの流局。
東4局1本場
寿人がを仕掛け、ソウズのホンイツに向かう。迷いのない一鳴き。