仲林圭「麻雀の教科書」であり「雀王」である男は、
なぜ三色を拒否したのか?
文・髙倉拓馬【火曜担当ライター】2024年10月15日
第2試合
東家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
南家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:伊達朱里紗(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
「Mリーガーの中で、誰の麻雀を見たら一番勉強になりますか?」
──これは、私が所属していた麻雀サークルで、入ってきたばかりの子がよく質問してくることである。
X上でも同じようなポストがよく見られ、読者の皆さんも一度はこの質問に触れた経験があるかもしれない。この質問がくると、
「仲林プロ」そう多くの人が答える。
仲林圭。日本プロ麻雀協会のトップタイトルである雀王の称号を持つこの男は、安定感のあるバランススタイルのプロとして知られており、時に「麻雀の教科書」ともいわれるほど、お手本のような打牌、ミスなく丁寧な打牌をすることで有名である。
観戦記のテンプレといえば、クローズアップされる選手の印象的な場面を取り上げ、その深堀りを行うというのが、個人的な考えである。その印象的な場面というのは往々にして、選手の個性を表すような思いがけない打牌であることが多い。
逆にいえば、仲林のような「丁寧な打牌」というものは、クローズアップをするのが難しく、選手の個性が現れにくいのではないか。と考える方もいると思うが、そんなことは全くない。それに、
仲林は、このタンヤオ三色ドラ2のテンパイから、
を打って三色を拒否していった。これを印象的といわずしてどうするのであろうか。
今回は、仲林圭の「教科書に載せたい打牌」から、この三色拒否の真相まで、トッププロの打牌を余すところなく書いていきたい。
斜め上のカメラに何度も目線を向ける仲林。ファンサービスにも余念がない。
そんな仲林だが、東場は手が入らない。
東1局、親の仲林。
をツモってきた所で、4トイツの手牌。内川が役牌を仕掛けている。
次のツモに応じて七対子か面子手かを決められるように、打として進めていく。
をツモってきて、面子手の方針へ。ここでは1シャンテンに取らず、打として手牌をほぐしていった。
盤面を整理する。内川は役牌を仕掛けていて現状1副露。
は1枚切れで面子になりづらく、打としたところで現状の受け入れがかなり狭い。
打には4つの意図があり、
①まわりがくっついた時のタンヤオ形への変化。仕掛けも考えることができる。
②裏目となる、、はそれぞれ打点が高くなって戻ってくることができ、のくっつき形1シャンテンになるため、受け入れも多く、速度的にロスはそこまでない。
③仕掛けている内川への若干の対応。を残すことはすなわちピンズをあと2枚吸収できる可能性を残すことであり、内川にピンズを鳴かせないことで自分のアガリ率を上げる。今放銃することを嫌っているのではなく、周りを鳴かれて自分のアガリ率が下がることを危惧している。
さらに、
④この切りによる空いたスペースを利用して、更に打点の種を残す。今回のようなまわりのくっつきや、ドラも残しやすい。
意図②を補強する材料として、仲林はこの2シャンテンでも打としている。結果的に放銃となっているが、内川はまだ1副露、打点やテンパイ率がともに不明ではドラの筋。放銃しても安くなる可能性も高い。親の時に自分が目指すのはアガリや流局時テンパイであり、安い放銃は「自分の目標が達成出来なかった」というだけで、悔いる必要が全くない。
仲林の丁寧さが一番表されたと思っているのが次の東2局。
猿川がを鳴き、その後にのトイツ落とし。
それを見て、仲林はノータイムでを処理して両面を固定し、
次巡、猿川がを手出ししたのを見て、
現物のを打って面子を崩し、完全撤退。まだ1段目なのに、撤退を選択した意図を探る。
猿川が打のトイツ落としをした所。
マンズ、ソウズ、ピンズとバラ切りされており、ホンイツの可能性は薄い。あったとしても、と孤立していた字牌やマンズのトイツが振り替わったくらいであり、やはりホンイツはそこまでないだろう。
そして、7という面子に使いやすい牌が打たれていることから、
「より良いトイツを持っている可能性が高い」