その押し、“勇敢”か“無謀”か―― チームを救いたい。#日向藍子 決死のプッシュ【Mリーグ2024-25観戦記 10/21 第1試合】担当記者 #後藤哲冶

勇敢と無謀は紙一重。
難しい判断ではあったが、この放銃は“勇敢”に入って良いと、私は思う。

南4局に行こう。

瑞原との点差は1000点。とにかくアガれば最低でも1.5着、だいたいトップという、いわゆる「アガリトップ」の場面だ。
そんな日向に、今はいらないドラの【1ソウ】が重なる。
これで、タンヤオへは少し行きにくくなった。

日向が選んだのは【4ソウ】
これは明確に良くない打牌に見えた。
まだターツが足りておらず、【3ソウ】引きはもちろん、【5ソウ】引きだって嬉しい。
縦系の手を見たとしても、タンヤオを見たとしても、くっつきとしてあまり良くない【8マン】【8ピン】を差し置いて選ぶ牌にはならない。

親番の瑞原が役牌の東を仕掛けた。
形が相当良いとは言えないが、ここは仕掛けて前に出る。
瀬戸熊はもちろん、大介の満貫ツモでも2着に落ちてしまうことから、安くてもアガリが欲しい場面。
このあたりの嗅覚は流石の一言。

中盤、着々と手を進めていた日向に、テンパイが入った。
【2マン】は嬉しい入り目イーペーコーが確定して、この【6ソウ】【9ソウ】待ちをダマに構えることができる。

次巡、瑞原にもテンパイが入る。
【6ピン】をチーしてテンパイ、待ちは【3ソウ】【6ソウ】だ。

大介にもテンパイが入る。
ペン【3ソウ】待ち。三色変化での打点アップを見て、ダマテンに構えた。

【3ソウ】【6ソウ】【9ソウ】を巡る、オーラスの戦い。
待ち枚数が多いことから考えても、決着は必至。

日向が祈るように山に手を伸ばす。

持ってきた牌を、手元に手繰り寄せて――

「ちゅも!」

ABEMASファンが一番聞きたかった声が、卓上に響いた。

大きな大きな、トップ獲得となった日向。
ABEMASはこれでマイナスは300には行かずに踏みとどまった。

対局中にも見えた、穏やかな笑み。
とはいえやはり、今は安堵の気持ちが強いように見えた。

日向はよく、自分のことをネガティブと評する。
麻雀において、ネガティブは悪い事ばかりではない。最悪の状況を想定し、回避するのは大事だからだ。

しかし今日見せてくれたプッシュは、トップを取りたいという、「ポジティブ」な気持ちから来ているように見える。
Mリーグルールにおいて、トップはとりわけ大きな意味を持つ。
だからこそ、今回こそ放銃という結果に終わったプッシュ、その「ポジティブ」さは、また見せて欲しいなと思う。

ファンはきっと、ネガティブな日向も、ポジティブな日向も、大好きなのだから。

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