白鳥から火の鳥へ〜ABEMAS復活をかけた白鳥翔の挑戦【Mリーグ2024-25観戦記 11/29 第2試合】担当記者 千嶋辰治

白鳥は1枚、また1枚とツモ山に手を伸ばす。
が、白鳥が焦がれる牌は中々現れない。

ただ一つ、白鳥に神が味方したのは、他家3者に手が入らなかったこと。
悲壮感漂うその姿にそれぞれ道を明け渡さざるを得なかったために、白鳥は多くのツモに巡り合うことができた。

ツモを手繰ること10巡目。

思いを寄せる【3マン】ではなかったが、アガり牌である【6マン】がその手に訪れた。

安めか…。

悲嘆に暮れる間も無く、白鳥は裏ドラに手を伸ばす。

そこに、「希望」があった。

アタマの【9ピン】が裏ドラで満貫のツモアガりに。
これで白鳥は前を行く2人に追いつき、待望の親番を迎える。

ここから白鳥は怒涛の4連続和了でトップ目に。

長い親番が終わった頃には、2番手の堀に対して2万点余りの差をつけて優位を築いた。

しかし、解説の土田浩翔は自らの経験を踏まえてこう語る。

「どこかでこれからも勝負に出ていかないとキツいですよね。」

トップ目に立ったとはいえ、白鳥はここから瀬戸熊、堀、小林の3人の親を落とさなければならない。
特に小林が大きく点棒を失っており、瀬戸熊や堀にはラスを引くという危険性が限りなく低いので、白鳥に対して強めのチャージがかかることは想像に難くない。

では、どうしたら良いのか。
土田は力を込めて言う。

「勝負しなければいけないですよね。」

トップ目だからこそ。
勝ちたい気持ちが一際強い今だからこそ。
安全な道を行かずに、敢えて踏み込む。
それが大切なのだと語った。

今宵の白鳥の覚悟がいかばかりだったか。
それが示された1局が南2局1本場だった。

中盤を過ぎるも、白鳥を追いかける面々から火の手はおろか仕掛けも入らない展開。
しかし、瀬戸熊や堀からはシュンツ作りのキーとなる3や7の牌が次々に打ち出されていて、いつリーチの火の手が上がってもおかしくない状況。

失点を恐れるなら、1枚か2枚、瀬戸熊と堀への受け駒を持っておきたいところ。

しかし、白鳥はここで安全牌の【發】を離してアガりに向かう。
そして、いち早くテンパイに漕ぎ着けた。

役ありの【2ピン】【5ピン】【6ソウ】待ち。
石橋を叩いて渡るなら、ここはヤミテンの一手か。

リーチか否かの判断に時間を要したこともあり、白鳥はヤミテンの選択。

「リーチをかけた方がいいんだけどね…。」

土田は少し残念そうにつぶやく。

もしも、白鳥が戦う姿を見せずにいたらどうなるだろうか?
追いかける瀬戸熊や堀にとって、それは戦うべき相手が減ることを意味する。
3人を相手にするから麻雀は難しいのであって、相手が減ればそれだけ自分の我が通しやすくなる。
普段なら通らない主張も、白鳥が注文を付けなければあるいは逆転まで…という最悪のシナリオが待っているかもしれない。

「勝負しなければいけないですよね。」

土田が語ったのはまさにこういう場面。
勝負に突っ込んでいけるか否か…このゲームの分水嶺となった。

次巡。

白鳥は【9マン】をツモ切り、リーチとした。

「純粋に加点した方がトップにつながりやすいかなと思ったのと、どこかからリーチがきた時に無筋を引いたら多分オリちゃうんで、あの局だけの期待値を見たらリーチの方が良いなと思って… ヤミテンにしたのがミスだなと思ったのでリーチを打った。」

リーチの同巡に小林からリーチがかかり、

その直後に白鳥は【4マン】をツモっている。
本人が語ったように、小林の無筋である【4マン】をツモってヤミテンのまま押すことができたか否か… ラス目のリーチに放銃したくないのであれば、当然に現物の【8マン】あたりを抜き打っていただろう。
ならば、このアガりは生まれていない。

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