1枚切れのを引いて、これで七対子に決め打ち。
の面子が出来てもまだアガリ率は高くないし、ポンでは打点がかなり下がってしまう。
即リーチが打て、と、よりは場況がよさそうなに照準を合わせた形だ。
次巡はツモ。
を序盤に打っている人が2人いるため、の場況が良い。
を引いた時には単騎のリーチが考えられる。場況良し、→の切り順となり、出アガリ率もそこそこありそうだ。
と同様に場況の良いを引いて、と入れ替える。
これで、イーシャンテンの布陣は整ったといっても差し支えないだろう。
こちらも狙い通り、を重ねて二度目の単騎でリーチ。
4巡目に打、11巡目の宣言牌と、河がなにやら変にも見えるが…
知ったことではない。1枚切れの字牌は、出やすい牌でもあれば、山にいる可能性が高い牌でもあるのだから。
ここまでで、たろうの決定打に至るまでの過程を紹介してきたが、最後にたろうが魅せた「高打点の幻影」もひとつ紹介させていただこう。
それが東3局。
たろうは、と立て続けにポンして、打東とする。
ここまでは、一見なんの変哲もないよくあるかわし手だ。
と安全度が高いを入れ替える。
この残しからの安全牌切りには、解説陣も驚きを隠せていなかった。
考えられる意図は2つ。
①ポン→縦引き時のトイトイ変化
②自分の河にソウズが打たれていないことを活かしてのホンイツブラフをにおわせ、のアガリ率を上げる
この狙いだ。
そして、次の手出しでその意図は明らかになる。
それがこのツモでの空切りだ。
ここではが一枚切れということもあってトイトイには取らず、この手をかわし手にする。
ソウズが一枚余ったことでホンイツの可能性をにおわせを出させやすくする、②の意図が強めに出ている。
では、たろうはなぜ空切りをしたのか?
その真価は、直後のツモ、手出しでの両面払いで存分に発揮される。
そう、これこそが「高打点の幻影」だ。
この両面払いは、周りから見るとたろうの手がトイトイに変化した可能性を否定しきれず、途端にションパイや役牌を打ちづらくさせてしまう。
しかも仕掛けているのは高打点の仕掛けで定評のあるたろう。このブランドは非常に大きい。
もう少し詳しく見てみよう。
松ヶ瀬が打ったに、たろうは声をかけていないことが分かる。
もしが当たるとして、たろうの手牌にとあったなら、はポンされていないとおかしいはずだ。
すなわちこの空切りは
・単純両面払いと錯覚させてトイトイの幻影を見せる
だけでなく、
・のアガリ率を上げる
効果も持っていたのだ。
さらに、このも空切ることで、安全度で牌を残したことをアピール。
これでトイトイの幻影を見せつけることに成功し、
全員を降ろして1000オール。
最大加点を果たした。
これは自分の河がどう見えるかを意識し続け、ブランドをつくりあげた賜物といえるだろう。
降ろされた親の滝沢から、少し悔しそうな表情が見えたのが私には印象的だった。