18発目のシリンダー 半年に渡る想いを込めて 引き金を引け #松本吉弘【Mリーグ2024-25観戦記 2/17 第1試合】担当記者 #後藤哲冶

3着目に落ちてしまった園田からリーチが入る。
ツモれば無条件2着。裏ドラが1枚乗れば、トップまで。

松本が、現物を抜いた。
親が菅原な以上、流局でトップを逃すパターンが存在しない。
菅原がテンパイの場合はもう1局あるからだ。
園田は打点が足りているかもわからず、そこに打ってしまうと1着から3着にまで落ちてしまうリスクを孕む。
手もアガれる形にはなっていない。当然のオリ。

そう、分かってはいても。
長い。あまりに長い。局が終わるまで10巡だ。
菅原がノーテンで、園田がツモらずに、終わることが一体どれくらいあるだろうか。

選ぶ、必死に。園田に当たらず、なるべく菅原がテンパイの取れない牌を。
懸命に絞り出す。

園田の最後のツモ番。
山に2枚あったアガリ牌【3マン】は、園田の手元には来なかった。
あとは、菅原がテンパイがどうか。

ホウテイの切り番。優が【白】を河に置いて、流局。

親番菅原の手牌は。

静かに、伏せられて。

――重く、苦しい17戦。
18回転目のシリンダーに装填されていた弾は、決して強力なものではなかったかもしれない。

それでも。
死力を尽くして勝ち取ったトップを。

松本が万感の想いで噛み締めた。

トップインタビューでは、少し目頭を押さえるようなシーンもあった。

17戦トップが無いことくらい、松本ほどの打数を誇る打ち手からすれば、ままあることかもしれない。
それでも、このMリーグという舞台で、チーム戦で。仲間の力になれていないというその焦燥感と心労は、我々には想像もつかない。

さあ、これで強い男が帰って来た。
シーズン終盤戦に、ファンにとってこれだけ頼もしいことはないだろう。

次こそは、松本の銃口が火を噴き、気持ちの良いアガリを決めて。
彼の屈託のない笑みが見られることを、楽しみにしたい。

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