交錯する想い重なる未来─その1牌に託して─【Mリーグ2024-25観戦記 3/28 第1試合】担当記者 小林正和

そして、序盤のリードを少しずつ消費しながらも

南4局

微差ながら、トップの座を抱えたままオーラスへと歩を進めたのであった。

一方、じっと機を伺いながらも、アガリは未だ遠くに感じていたのは…

Mリーグ2024-25シーズン、新戦力メンバーの一人として加入した竹内元太

直近の対局では、なかなかポイントが伸ばせずにはいたが、最終日にトップを飾れば、一気に頂点へと駆け上がる可能性を残しているのは流石の一言である。
そして今日のような厳しい展開の中でも、自分なりの突破口を探り続ける姿勢が、随所に垣間見えた。

東3局

前巡に【7ピン】の暗槓を見せた元太。その手牌には、滅多にお目にかかれない赤×3の輝きが宿っていた。そして、そこに【7ソウ】を引き込むと

【2ピン】とし、ピンズの形を並びシャンポン形に構える。その狙いは…

先にソウズターツが完成した時に威力を発揮するのだ。

その時の捨て牌はご覧の通り。

【1ピン】が既に切られ、さらに【7ピン】を暗槓しているこの状況下では、単純な【4ピン】【7ピン】のリャンメン待ちは著しく可能性が低い。
加えて、【5ピン】【8ピン】のターツ構成も場に見えている情報から物理的に否定されている。更に、先に【2ピン】を処理している点から、【2ピン】【4ピン】【4ピン】のシャンポン形や【2ピン】【4ピン】【6ピン】のリャンカンの構成も考えにくい。
つまり、この【4ピン】【5ピン】というのは理詰めで見ても比較的放たれやすい牌と言えるだろう。

アガリには結びつかなかったものの、数巡先の未来を予想した待ち取りの選択。そして、前述した東4局2本場の寿人からのアシストを受けた場面でも、相手の心理を冷静に読み取り、普段よりワンテンポ早く仕掛けを入れる。その引き出しの多さには、思わず唸らされるばかりだ。

そして、プレッシャーを滲ませながらも、最少失点で切り抜け、静かに反撃のタイミングを見定めると

南3局に、中田からリーチ・七対子・裏2の満貫の出アガリ。原点付近まで一気に持ち点を回復させ──

南4局に“全員集合”を迎えるのであった。

96試合という長き旅路の果てに、たった一局の行方が、今シーズン最高の称号・MVPを決する。それは、まるで運命の悪戯──。

その始まりは

6巡目、元太の切り番からであった。
ソウズのリャンカン・ブロックの選択である。

【3ソウ】【7ソウ】の比較──

元太
「山に残っている枚数にそこまで大差はなかったと思います。ただ強いて言うならば、仲林くんが【發】のポン出しが【9ソウ】だったんですよね。もし【8ソウ】が固まっていた場合、鳴かれて一手進ませてしまうのは損かなと。」

元太は上記の理由により、打【2ソウ】を選んだ。
この時、仲林に【8ソウ】がポン材になってはいなかったが、それぞれ山に残る枚数は同じ2枚。読みの精度も無敵である。

何とか先にテンパイを入れ、わずかでも優位性を掴みたかった元太。
しかし、その“先手”を握ったのは──

卓上を支配する“魔王”佐々木寿人という存在であった。

仮テンの【6マン】単騎から、静かに手を入れ直し【5ソウ】【8ソウ】のノベタンへ。
寿人としては、できることなら役ありのピンフに仕上げたい所。不本意な形ではあるが、ここを勝負所と見定め、“決断”の一打を放ったのである。

そして、リーチを受けた元太の一発目のツモ。珍しく、軽く牌を叩きつけ、卓上に微かな音を残す。

それも、そうだ。
右手で静かに覆われたその牌は──“裏目”の【3ソウ】だったのだから。

数巡前まで手の内にあった【2ソウ】を見つめる“無敵のタイタン”。その眼差しは、ひと時だけ人間のそれに戻ったのように見えた。

もし、あの時…【8ソウ】を選んでいたら──

こちらも、か細いMVPへの道を閉ざす事なく前を見据える仲林。元太は恐らくヤミテンで、この【5ピン】を捉えていただろう。

そして、かすかに触れた最高峰の栄冠への階段。
足先からすり抜けたその未来は、儚く遠のいていくと

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