交錯する想い重なる未来
─その1牌に託して─
文・小林正和【金曜担当ライター】2025年3月28日
誰かの願いが叶い、誰かの想いが終わる夜。卓上に並ぶのは、ただの麻雀牌ではない。それぞれの願いや悔しさ、そして希望──。
南4局は“全員集合”を迎えていた。

約半年間におよぶ激闘を果て、積み重ねてきたものが今日という日に辿り着く。チームの誇り、個人の栄光、そして未来への布石。それぞれの想いが交差する旋律となって、今宵──レギュラーシーズン最終幕が静かに開かれたのであった。

第1試合
東家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:竹内元太(セガサミーフェニックス)
西家:中田花奈(BEAST X)
北家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
対局を振り返る前に、押さえておきたい幾つかの注目ポイントを整理しておこう。
本日の対戦カードは、2位・4位・5位・9位の組み合わせ。そして、セミファイナル進出圏内となるボーダーライン現在6位の▲206.0Pからは、やや距離のある位置に名を連ねていた。
この特異な構図が描き出すもの…

そのヒントは、こちらのスコアボードに隠されている。そう、二つ目のポイントは誇りと意地がぶつかる“個人ランキング争い”だ。
まず、元太にとって、この一戦はただのトップではない。盟友・醍醐の存在をはじめ、トップの頂きに立つ白鳥すらも射程に捉える。また寿人や仲林でさえ、第二試合目も控えていると考えと十分に逆転の目を残していると言って良いだろう。
それは偶然か、それとも必然だったのか──。
程よく順位変動に影響しないという条件の下、最終日に訪れた“MVP争いに、チームメイト・サポートたちが静かに息を呑んでいた。
そんな中、東1局から試合が大きく動き出す。

「4,000オール!」
裏ドラ表示牌が捲り上げられたのと同時に、静寂に包まれたスタジオ内に響き渡るお馴染みの素早い点数申告。

その一声を放ったのは“攻めダルマ”佐々木寿人であった。
直近7戦は全て連対、うちトップ5回。勢いだけを指標とするなら、間違いなくMVP候補の筆頭に挙がるだろう。
実はこのアガリ…

トイメンに座る元太のツモ切ったに、仲林が声を掛けなければ…

寿人はトイメンに座る中田へと流れたこので「6,000オール!」となっていた。
仲林の意地が光る仕掛けも見応えがあったが、それをも凌駕するかのように、別のアガリルートを切り拓いた寿人。その姿から、止まらぬ勢いを感じた人も多かっただろう。
そして、ここから寿人は“攻め一辺倒”という印象を良い意味で裏切っていく。揺るがぬ判断と安定感ある打ち回しで、静かに、しかし確実に場を支配していったのだ。
東4局2本場

メンツ手とトイツ手が交錯する判断の難しい手牌。それでも迷いなく打とする。

その時の盤面がこちら。
確かに、ソーズの形は二度受けで少々窮屈な印象。しかし、易々とターツを見切るには惜しい形にも思える。では、なぜ寿人は迷いなく
を手放したのか。その真意は、まもなく明らかとなる。

すでに副露を入れていた元太が河に置かれたに、すかさず反応。つまり寿人の打牌には、“下家を押し上げるための静かな手助け”という意図が込められていた。
この“見えざるアシスト”によって、大きなダメージを受けたのが…

他でもない東家・仲林であった。
このハネマン級も見えるチャンス手。しかし元太に更なる仕掛けが入った瞬間、順調に流れていたツモのメロディーに乱調が生じると

まさかのノーテン流局。
虎視眈々とトップを狙っていた仲林にとって、それはあまりに痛すぎる親落ちとなった。
こうして寿人は、卓上に流れる親の“テンポ”を敏感に察知すると、ラス目の元太の仕掛けを巧みに活用しながら、静かに局を進めていった。
南1局4本場では

自身の加点も視野に入れながら、2副露の構えを見せる西家・中田に対し、ラフにドラのを放つ。結果としては放銃となったが、失点は2,000点と軽微。確実に局を進めていく。