瀬戸麻衣が歓喜の涙を流すまで〜瀬戸熊直樹のイズムを胸に【麻雀最強戦2025 女流下克上決戦】観戦記【決勝卓】文:千嶋辰治

【7ソウ】の4枚使いで【北】バックの仕掛け。
しかし、河は字牌と【9ソウ】が並べられていてタンヤオの仕掛けのようにも見えるから、【北】が鳴けることも期待できそうではあるし、【7ソウ】のカベで【5ソウ】【8ソウ】も同様である。

瀬戸はその後に【6ソウ】をツモって打【5マン】。目一杯のイーシャンテンに構えた。
そして、

瀬戸にいよいよテンパイが入った。
いまだ【北】は山に2枚。瀬戸の目に【北】が現れたその瞬間にファイナル行きの道が開ける。

その時は意外に早く訪れた。

瀬戸の右手に踊る【北】
プロ歴2年目、二十歳の瀬戸麻衣がファイナルへの扉をこじ開けた瞬間だった。

対局後のインタビューで、瀬戸はこの仕掛けについてこう語った。

「一回親に放銃しても、自分にはまだ条件が残る。だからなんとかなるだろうと思って。」

この言葉。
私はどこかで聞いた覚えがあった。

今日の解説を務めていた元最強位、瀬戸熊直樹の言葉だ。

「勝負できる時にそれを先送りしないこと。たとえ放銃してもやり直せるならそれでいい。ひと勝負するんだ。」

瀬戸熊直樹の背中を追いかける瀬戸麻衣。
彼の勝負哲学を、彼女はしっかりと胸に抱いてこの場にやってきた。
オーラスの仕掛けがその証左であろう。

憧れの人を目の前に、涙が抑えきれなかった瀬戸。
でも、涙を流すのはまだ早い。
最高の舞台で瀬戸熊直樹と戦うその日まで、その涙は取っておいたらどうだろうか。
きっと、その日はすぐにやってくるはずだ。

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