「いつもとは違う」最強戦 逆境に立ち向かう二階堂瑠美に、心からのエールを 【麻雀最強戦2025 女流下克上決戦】観戦記【A卓】文:虫かご

「いつもとは違う」最強戦 

逆境に立ち向かう二階堂瑠美に、

心からのエールを

【A卓】担当記者:虫かご 2025年9月27日(土)

9月27日(土)の麻雀最強戦グループリーグ7、「女流下克上決戦」。A卓で相まみえたのは、登竜門を駆け上がってきた若手と、それを迎え撃つ実力者だった。

東家:二階堂瑠美

言わずと知れた第17期最強位。昨シーズン限りで風林火山の選手を勇退し、「CHO(Chief Happiness Officer)」として陰からチームを支える。勇退のきっかけともなった体調面の不安は拭えないが、トーナメントとの相性の良さを見せるか。

 

南家:御子柴佑梨

華やかな衣装に身を包み登場したのは御子柴。若手女流プロの登竜門である桜蕾戦の第5期優勝者である。事前インタビューでは、自分の麻雀に「自信が無い」とこぼしていたが、不安をはねのける結果を手にできるか。

 

西家:黒沢咲

TEAM雷電所属。一度乗せたら手がつけられない強気のヴィーナス。チームメイトの瀬戸熊が解説席に座る中で「いい麻雀を打てば(瀬戸熊は)応援してくれる」と意気込む。身内の力も借りて、ファイナルへの切符をつかみたいところだ。

 

北家:瀬戸麻衣

昨今の麻雀業界における若手有望株の筆頭と言っていいだろう。ABEMAで放送された某トーク番組で「Mリーグチームを作るなら?」というテーマになった際、土田浩翔プロがその名を挙げるなど、注目度は高い。プロ2年目の現役大学生、下克上なるか。

 

緊張の瀬戸、いつも通りの黒沢

スタートダッシュに成功したのは、跳満も見込める好配牌を手にした瀬戸だった。最終的には【1ソウ】【4ソウ】待ちでリーチし、1000-2000の和了と少し肩すかしをくらったような印象だが、「この和了で気持ちに余裕ができた」と振り返る。プロ2年目で迎えた大舞台にかなり緊張していたという瀬戸。これ以降は自ら首を突っ込むことを避け、やや保守的な打ち回しに徹することになる。

対して、いつもと変わらないマインドで臨んでいたのは黒沢だ。東2局【3ソウ】【6ソウ】でリーチした瑠美の当たり牌を吸収し、現物の【3ピン】【6ピン】待ちでテンパイを入れる。ダマテンを選択したが、次巡あっさりとツモって400-700の和了となった。

リーチしていれば一発ツモの和了だったが、対局後「普段のフォーム通り」と振り返った。このテンパイは「そんなにテンションが上がらなかった」という。少なくとも、今日の黒沢はいつも通りのようだ。

 

勝負を分けたツモ切りリーチ

局面が大きく動いたのは、南1局だった。瀬戸、御子柴の両名が順調に和了を重ねる中で瑠美も粘り、以下のような点棒状況。

瑠美が7巡目にカン【6ピン】の役ありテンパイを入れ、ダマテンタンヤオピンフ、あるいはドラの【4ピン】が絡むような手変わりを狙う。

しかし、思うような広がりを見せない中で御子柴から3枚目の【3ピン】が打たれる。瑠美としては【4ピン】を引いた【3ピン】【6ピン】待ちを目論んでいた中で、カン【6ピン】に勝る魅力が薄れた格好だ。ならば、と次巡にツモ切りリーチを敢行した。

【3ピン】が通った直後のリーチ。発声した本人もこの表情である。

しかし、瑠美にとって最悪な結果が訪れる。ドラを2枚抱え、【7マン】の両面チーから発進していた瀬戸。瑠美が持ってきた【8マン】もポンし、【3ピン】【6ピン】【4ピン】待ちで高目満貫のテンパイを入れる。

無情にも瑠美が【4ピン】をつかみ、瀬戸が8000を直撃した。

対局後、瑠美は「ツモ切りリーチはよくなかった」と振り返った。【3ピン】【6ピン】待ちでの和了が期待しづらくなった状況でのリーチ。瀬戸だけでなく、対面の黒沢からもやる気は感じ、直撃の可能性も若干感じたという。それでも、「即リーしなかったのなら、ダマテンを続行するか、オリを選ぶべきだった」と口にした。

迎えたオーラス南4局。点棒状況は以下の通り。3着目の瑠美と、2着目の御子柴の差は7000点。瑠美は1600-3200以上のツモアガリか、8000の出和了で通過となる。ただ、前者の場合、親被りによって瀬戸の敗退が決まる状況だ。

御子柴が【1ピン】【4ピン】のテンパイを入れる中、瑠美は【3ソウ】【6ソウ】待ちでリーチを敢行。ツモ+一発or裏1で逆転する手を入れた。

これには御子柴もオリを選択するかと思われた中、

【9ソウ】切り。

……ん?

瑠美も含めて、観戦していた全員がこの表情になっただろう。

前述したが、御子柴の立ち位置は「瑠美にどのようなツモ和了が生まれても通過する」ポジションだ。瑠美が条件を満たせなかった場合はもちろん、条件を満たすツモ和了は親被りで瀬戸を脱落させる。直撃さえなければ通過する状況で、無筋の【9ソウ】切りは選択するべきではなかっただろう。

御子柴は、対局後にこの一打を反省している。瑠美との差を意識するあまり、瀬戸が親被りするケースが頭から抜けていたという。「いつも通り、普通に打てていたと思ったけど、オーラスは緊張がマックスだったのかな」と振り返った。やはり最強戦の舞台は、対局者の「いつも通り」を崩す空気を持っているのかもしれない。

結果は、瑠美が【6ソウ】をツモるも、裏が乗らず1300-2600の和了。条件を満たせず、御子柴、瀬戸の若手2名が通過となった。ちなみに、御子柴は最後の点棒授受を終えて、はじめて自身の通過に気がついたという。

 

「天衣無縫」の復活を待ちわびて

試合後の取材で、瑠美は小さく「体調はあまり良くなかった」と口にした。東場が終わった段階で集中力が途切れ、最後までもたなかったという。押し引きのタイミングも普段とはどこかズレているような違和感もあった。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀シリーズ 新刊情報/