『風』に乗って高く舞い上がれ 猛き昇龍・田村洸【麻雀最強戦2025 激突タイトルホルダー】観戦記【決勝卓】文:東川亮

『風』に乗って高く舞い上がれ

猛き昇龍・田村洸

【決勝卓】担当記者:東川亮 2025年10月18日(土)

麻雀最強戦2025「激突タイトルホルダー」、決勝卓には冠に違わぬ、そうそうたるメンバーが集まった。

A卓1位、石井一馬

最高位。最高位戦Classic、蒼翼戦と3冠を獲得。Mリーグに新規参入したアースジェッツのドラフト1位指名を受けた猛者。

A卓2位、河野高志

多井隆晴らとしのぎを削り、令昭位としてこの戦いに乗り込んできた大ベテラン。その力は今なお衰え知らずの豪傑。

B卓1位、鈴木優

言わずと知れたMリーグ・U-NEXT Piratesのポイントゲッター。2023-24シーズンにはMVPとして、完全優勝を果たしたチームを牽引した強者。

残る1名を考えれば、優勝者はこの3名の中の誰か、と予想するのが普通だろう。特に優は、予選卓で支持率およそ74%と圧倒的人気を集めており、それだけの期待を背負っている、とも言える。

しかし、麻雀で勝敗を決するのに、人気や実績が介入する余地などない。そして最強戦ではしばしば、下馬評を覆す結果が出ることもある。

大事なことはただ一つ、卓上で何を見せるかだけだ。

B卓2位、田村洸

日本プロ麻雀連盟の新設タイトル『昇龍戦』を制してこの舞台に上がってきた、関西の雄。

ネームバリューで大きく劣る彼は、しかしこの日、麻雀の神に愛されているかのようだった。

一発勝負の決勝卓、できれば序盤に優位なポジションを築いておきたい。

そんな東1局、わずか4巡で田村がリーチをかける。打点こそないものの、待ちは【4ソウ】【7ソウ】【6ソウ】【9ソウ】の4メンチャンと圧倒的だ。

優としては、みすみすこの親番を失いたくはない。

序盤ということで失点のリスクを負って押し返して行くが、

少々時間はかかったものの、田村がツモアガリ。

まずは幸先よく加点をしていく。

東2局は河野が2600オールをツモるが、1本場では田村が【發】ポン、【6ソウ】チーと仕掛けて早々にホンイツテンパイ。

優のリーチを受けるもツモって1300-2600は1400-2700、持ち点を増やしていく。

ここまでも田村の勢いを感じるが、凄まじかったのが東4局からの3局だった。

この局も田村の手はいい。2メンツにリャンメンもあり、うまくまとめて3900くらいの中打点は狙いたいところ。

それが、テンパイ形はこう。なんとドラ【6ピン】をゼロから暗刻にしてのカン【8マン】テンパイ。赤のない麻雀最強戦ルールで、4枚中3枚のドラを手中に収めている手は紛れもない勝負手であり、相手から高打点の押し返しが来る可能性も低い。ここは悪形待ちとは言え、真っすぐリーチと打って出る。

このとき、河野は雀頭のない1シャンテンだった。かなりテンパイしやすい形ではあるが、

ソーズでメンツができてしまうと、テンパイを取るにはマンズを切らなければならない。

こういう手のときは、【7マン】を残しておいたほうが【6マン】引きでさらなる選択もできるし、シンプルに外側の牌、ということもあったか。何かに魅入られたかのように、河野の手が【8マン】を切り出す。

リーチ一発ドラ3、裏ドラは乗らずとも、2着目からの満貫直撃は大きい。

南1局では【南】ポンから発進すると、ネックと思われたドラ表示牌の【7ソウ】をすぐに引いてテンパイし、

次巡にツモアガリ。乗せたら怖い優の親をあっさりと蹴ることに成功。

田村にとって、何もかもがうまくいきすぎている。

そして南2局。ここで河野の親を蹴ることができれば、ほとんど一馬と一騎打ちの状況に持ち込める。メンツのない手で、田村はトイツ手の進行に。

河野は【發】を鳴いて手を進めつつ、ホンイツやドラの【北】を使っての高打点を狙う。

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