全人口の2%の男、”IQホーク鷹見としや”驚愕の選択 【麻雀最強戦2025 最強の遺伝子】観戦記【B卓】文:中野巧

先日結婚式を挙げたばかりの妻、山脇千文美の存在だ。
10月25日、先に行われたA卓で山脇は出場し、オーラス4着目から怒濤の追い込みで勝ち上がりを決めていた。
試合前多喜田に「奥さんすごいね」と連絡したところ「スターすぎます」と返信があった。
ここで多喜田が敗退した日には、本人たちは関係なく見ている私の肩身が狭くなる。
だから絶対に勝ち上がらなければならない。自分のためにも、全国の夫のためにも。

【中】を仕掛けて1000点で手を進めていた平良が【2ソウ】【5ソウ】のテンパイ。


テンパイ打牌で打たれた【東】を多喜田がポンし、【9マン】【6ピン】【9ピン】のテンパイに。

ただ圧倒的高みから見下ろすIQホークも黙っていない。

ここの手牌から、多喜田に現物で平良に通っていない【3ソウ】を打った。
意図としては安いと思われる平良にアガッてもらうため。
ただ判断が半端なく速かった。まるで天才がクイズ番組で問題の途中で回答するような。

ただ次の巡目からは万が一にも多喜田への放銃をしないための打牌を選択した。
もしここで現物ではないがほとんど通りそうな【2ソウ】を切り、平良に1000点の放銃をしていたら。その実力と判断の正確さに同世代のプロはみな震えるところだった。

結果、多喜田が【東】ドラ3のツモアガリ。
7巡目の選択で1枚切れの【9マン】を残し、見事正解に導いた多喜田。
実は多喜田はMリーガーで麻雀業界に革新を起こした渡辺太を麻雀プロに導いた男でもある。
正確さでは負けない! と言わんばかりのアガリとなった。

東4局

ここで鷹見はMリーグなどこれまで数多の実況・解説をしている面々を困惑させる。
特に実況の日吉辰哉からは「あまり見たことのない麻雀」と言われた。

2巡目に多喜田の切った【3マン】を234でチーから始まり、4巡目のドラ切り挟んでの3フーロ。最終的に【西】単騎でテンパイを取るが、234の三色1000点が濃厚の遠くて安い仕掛けをする。
この時、鷹見は瞬時に計算をしていた。そのうえで最も自分が有利になる選択として一見無謀に見える仕掛けをしたのだ。

鷹見の計算

宮成→協力者になりうる存在・・・①
2着目かつ点差も1万点以上離れており、局の消化は歓迎。なので1000点とわかれば放銃してくれることも十分ある。
最悪なのは多喜田・平良のツモアガリで親被りし、2着以下が接戦になること。

多喜田、平良→時には協力者になりうる存在・・・②
着順が上の選手と点差を縮められるような大きい手をアガりたい。多喜田は鷹見の上家であるが、自分の手が良ければ下家である鷹見を無視してでも進める。
最悪なのは宮成が満貫以上をアガり、現実的な逆転が難しくなること。
もし巡目が進んだ際には、鷹見には打ってもいいかという判断をされやすい。

この2点から鷹見は一見無謀であるような1000点の3フーロ、単騎待ちでもテンパイを急いだ。
1つ1つ説明をされたら理解するが、瞬時にこれらを把握し2巡目の【3マン】をチーする、まさに驚愕の選択だ。
鷹見が東2局で見せた手の震えは、あの時にここまでを計算していた可能性もある。
「あり得ない」と思いたいが鷹見は将棋棋士でMリーガーの鈴木大介が推薦したこともこの考察に一役を買っている。

その後、巡目が進み鷹見は【西】単騎から【1マン】単騎のテンパイに。
平良は親の宮成のノーテン気配を察知し、少しでも点差を縮めるため役なしテンパイを取っていた。そこに【5ソウ】を重なり、【發】なら出アガリができるように。

同じく多喜田も役なしでテンパイを入れる。しかし、テンパイ打牌は平良の当たりである【發】

平良、沈黙。
ここで1000点を多喜田からアガっても2着との点差はまだ20000点近く。
鷹見、宮成が喜ぶだけのアガリになってしまう。
であれば目標である2着目の宮成との点差を縮めたい。

しかし流局まであと2牌のところで平良は鷹見のアガリ牌【1マン】を掴んでしまう。
正しい選択をしていても必ず結果に表れるとは限らないのがこの麻雀。
平良はこの中で一番プロ歴が長く、その理不尽を知っているため、一切動揺しない。

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