デビュー戦の苦い記憶を超えて 下石戟、南家で掴んだ会心の勝利【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/30 第1試合(麻雀チャンネル)】担当記者 宮水さくら

南3局
ここで下石に難解な配牌が訪れる。
ドラは【5ピン】。点棒状況は以下の通りで僅かに下石がリードしているトップ目だ。

平場であれば、タンヤオを見て【1ピン】から切り出す手も考えられる。
だが、下石が選んだのは打【6マン】
これには下石の明確な意図があった。

試合後のインタビューで、下石はこう語っている。
【3ソウ】【6ソウ】を引いたら【5ピン】を1枚切って、カン【2ピン】でリーチに行くつもりでした」
点棒状況を加味したうえで、〝5200をアガれば、オーラスでかなり優位なトップ目で迎えられる〝
との判断だろう。
つまり、この一打はただの何切る問題ではなく、「次の展開までを見据えた勝負の構築」だったのだ。

さらに彼は続けた。
「東1局や、違う点棒状況なら【1ピン】を切っていたかもしれません」

点数状況を正確に踏まえ、バランスをとる冷静さ。
この局はアガリに繋がらなかったものの、〝状況で選べる打ち手”としての完成度を感じさせる一局だった。

南4局
トップ目でオーラスを迎えた下石。1000点でもアガればトップという場面だ。
下石が【6マン】【9マン】待ちの高目三色・8000点のテンパイを入れた。


阿久津が切った【9マン】で8000点のアガリ。
自分の手でトップを決めた。


試合後のインタビューで、下石は「Mリーグのデビュー戦では南家で4着スタートだったが、その嫌な思い出が払拭できて嬉しい」と笑顔で語った。

Mリーグデビュー戦では南家で4着という悔しい結果に終わった下石。

だが、同じ南家で迎えたこの日の対局で、見事にトップを奪い返した。

 

打牌の一つひとつに、今期がMリーグ初舞台ながらも落ち着きと鋭い構想力がにじむ。

焦らず、慌てず、状況を丁寧に見極める姿勢には、若手ながらも勝負師としての覚悟が感じられた。

ときに大胆に、そして冷静に。

局面ごとに最善を尽くす下石の姿からは、ただ勝ちたいだけではなく、“チームを勝たせたい”という強い意志が伝わってきた。

 

対局を終えた後の下石の表情は、どこか穏やかで、しかしその奥に燃えるような闘志を秘めていた。

デビューからわずか数戦でここまでチームを背負う姿を見せるあたり、彼が持つポテンシャルの高さを感じさせる。

その一局一局に込められた覚悟は、決して一夜限りの輝きではない。

新鋭・下石戟

南家の席から見上げた景色は、あの日とはまるで違って見えただろう。

悔しさを力に変え、仲間と共に前へ進む。

その歩みは、Mリーグという長い戦いの中で、確かに彼自身の色を刻み始めている。

静かに、そして力強く──下石戟の物語は、ここから本格的に動き出した。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀シリーズ 新刊情報/