この一本場は、優の主導権により一人テンパイ連荘と言う結果で静かに閉じられていった。
この現象はポーカーでいう「プロテクション・ベット」に近い。要するに、相手からの反撃や追いつきを未然に防ぐための一手のようなものである。
2 :東3局3本場
この局もそれに近い手法を見せた。
マンズのホンイツに向かって二副露。とはいえ、終盤に差し掛かるところで形はまだイーシャンテンであり、しかもカンチャンやシャンポンが残る状態。正直、テンパイまで怪しい手格好だ。
そこで優は全体に安全そうな
をツモると…
迷わずドラの
と入れ替える。
テンパイ・ブラフだ。
もちろん、ポンされたりするリスクはつきもの。ただ、それでもこの一打は通った時にこそ最大の威力を発揮する。
ション牌の
で踏みとどまっていた東城だったが、ここで更に1枚切れの
がやってきてしまう。
(うわ、来ちゃったか…)
を抱えたまま押し切るのか、大きく受け直すのか。ほんの小さなバランスでも、局面は一気に傾く。
ここは受けに回る選択を取った。
そう。ドラを切り出した本人も怖いが、切られた周りも同じくらい怖い。
(もしかしてテンパイなの!?)
その一瞬の疑念が、押し返す気力をスッと半減させてしまう。
さえツモ切れていれば、2巡後のここでテンパイ。1枚勝負なら、きっと堂々と「リーチ」と言えていたはずだろう。
こうして、相手を見えない何かで降ろし、卓上の主導権を握る。そして終盤、気づけばしっかりとテンパイ。
いや〜、なんて悪い男なんだ。
優しい顔して、やってることは“ほぼメンタル圧”。もはや、ちょっとした卓上パワハラ!?Mハラ!?だろう(もちろん褒め言葉(笑))。
またしても優の一人テンパイで、着実に点を積み上げていくのであった。
止めるのは私!受け継がれた伝家の宝刀
こうして優の連荘は止まらない。視線も、空気も、卓上のテンポさえも掌握するような流れ。
そしてある意味、らしさが最も濃く出ていたのが東3局4本場だった。
ソーズを![]()
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と![]()
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のメンツで仕掛けている。つまり、手役はタンヤオ一直線。そしてやってきた「何切る?」の分岐点だ。
(ん?簡単やろ。ドラの
切るだけやん。)
……普通ならそう思う。
ドラを1枚外しても打点は変わらないし、待ちも良くなるだけだ。
しかし、話はそう単純じゃない。上家の高宮からリーチが入っているのだ。
そして… もちろん選択した牌は
ドラの
だ!
現物の
を切ってもテンパイは取れる。その時の見た目枚数は4枚。
一方で、ドラの
を切った場合にできる![]()
待ちも、見た目枚数は4枚。
つまり安全に構えても、攻めに転じても、枚数上の期待値は同じという状況だった。
そして、残り巡目はあと3巡。
終盤中のド終盤だ。
ここで危険牌を押すのは普通の人にはできない選択だろう。
ただ押せるのが鈴木優の強みなのである。
「枚数が残っていそうな方を選んだ。」
実際に安全策を取ると山に1枚、攻めの策を取ると2枚しっかりと残っていたのだから恐るべし。
しかし、この後めずらしく優の手が止まった。















