4選手の深い読みと
甘えぬ選択
勇気の決断が
今シーズン屈指の
名勝負を生んだ
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年1月7日
大和証券Mリーグ、1月6日の第2試合は、各者の持ち点25000が上下10000点と動かず推移する接戦となった。14局中流局5回、放銃がわずか2回という緊迫した試合は、4選手の深い思考から繰り出される一打によって、格別に面白いものとなった。
今回の観戦記では、選手たちの驚くような選択について触れていく。だいぶボリュームが多いが、ぜひ最後までお付き合いいただきたい。
第2回戦
東家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
西家:黒沢咲(TEAM雷電)
北家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
東1局2本場。
トイツの配牌をもらった黒沢が、道中でさらにと引く。こうなると役満・大三元を見たくなるが、はドラ表示牌に1枚めくれている。通常よりは達成しにくい状況ではあるものの、この時点では2枚、は1枚山に残っていた。
同巡、トイツ手に向かっていた滝沢がに続けてを暗刻に。こちらは四暗刻が見える。
ただ、アガれるかどうか分からない四暗刻よりは、目の前のアガリが大事。をポンしてトイトイのテンパイを取る。
を切った堀が、直後にテンパイ。待ちではなく、ドラの単騎でリーチをかけた。簡単に打たれる牌ではないが、アガれたときの打点がリーチピンフとリーチドラドラでは段違いだ。は山に2枚。
そのうちの1枚が、黒沢の元に訪れた。が1枚、も1枚。つまり、黒沢がを引ければ大三元まであるのだ。たとえそこまで行かずとも、アガれたときは小三元ドラドラのハネ満以上が確定する。
14巡目、引き。リーチの堀の現物であり、大三元に向かうならまったくもって不要だが、ここで黒沢は手を止めた。このときの視点を平面図で見てみよう。
河の牌は白色が手出し、黄色がツモ切り。瑞原は堀の切りリーチに対して現物のトイツ落としをしており、かなり受け気味の進行。一方の滝沢は、堀のリーチ以降、と、全く通っていない牌をツモ切り続けている。終盤に差し掛かろうかという巡目でこの打牌は、相当にテンパイしていそうだ。また、滝沢はのリャンメンターツを外した後にをポンしている。序盤の捨て牌からタンヤオでもなさそう、となると、手役はトイツ手がかなり想定される。となると、1枚切れの現物とて滝沢には安全とは言えない。
黒沢の手は役満が見えるとはいえ2シャンテン。また、滝沢の押しから「ドラがトイツで入っているかもしれない」と思っていたという。
もしそうなら、この役満は成就しない。黒沢はに手をかけ、役満を見切った。チームが苦しく、トップが欲しい状況とは言え、打てないと思えば甘えた打牌はしない。
甘えないのはこちらも同じ。まで押した滝沢だったが、ドラは止めた。ここまで押したから最後まで、というのは、リスクから目を背ける行為でしかない。この局は堀の一人テンパイで流局した。
東2局、黒沢の先制リーチが入る。待ちの3メンチャン、打点もそこそこ。
直後、堀がテンパイ。瑞原が宣言牌をポンしていて、一発は消えている。ドラ1リャンメン待ち、追っかけもありそうだったが・・・
さも当然といわんばかりの切り。勝負による黒沢への放銃を回避する。
遅れて滝沢がテンパイ。ここで、赤切りのリーチも考えたという。前巡、堀は少考から切り。滝沢はこれをトイツ落としだと看破していた。つまり、もう1枚のを一発で討ち取れる公算が高い、ということだ。
だが、そもそもが黒沢に通る保証がないし、当たったときのダメージが大きい。ここは自重し、を合わせた。
ここは親でドラ3の瑞原がソーズからで放銃。黒沢が3900のアガリをものにする。
東4局、瑞原の配牌。孤立のとはいずれも役牌、重ねるためにいったんなどから切る打ち手が多いかもしれない。
瑞原はから切った。重ねて仕掛けるというより、にドラをくっつけるなど、リーチを主眼に置いた一打に見える。
これが功を奏し、を暗刻にしてリーチ。
ツモってリーチツモ三暗刻赤の2000-4000、失点をすぐに取り戻した。第1打の選択によって、結果が大きく変わりそうな1局だった。
瑞原は南1局でもリーチツモピンフ赤ドラ、連続での2000-4000のアガリを決め、一気にトップまで浮上。試合の主導権を握る。