放銃は嫌いですか？〜中田花奈と渡辺太をめぐる放銃のススメ【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 12/11 第1試合（麻雀チャンネル）】担当記者 千嶋辰治

なぜなら…

終盤、太がをツモってアンカン。

カンドラは。

あっという間に打点が上昇して出アガリ6,400に。

そして、

ツモにて満貫のアガリ。

ドラ表示ののウラにいたのは。

中田があのタイミングで放銃なら1,300で終わっていたが、結果的に中田は親被りで4,000点の失点となった。

 

ただ断っておきたいのは、打点上昇はあくまで結果論だということ。

それは十分理解しながらも、放銃に穏やかな未来があったことに中田本人は苦笑い。

放銃なしはいいけれど、それは勝負させてもらっていないということでもある。

最後にそんなことを語った中田。

放銃しても良いから勝負の舞台に上がりたいというのは、まさに麻雀の真理ではなかろうか。

 

・太はそれでも放銃の道を探っていた

対局後のインタビューといえば、太も大変興味深い姿を見せていた。

「僕としてはなんとか中田さんにアガって欲しいと思っていた。」

 

そんな言葉で切り出したのは南4局。

ドラは。

まずは親の滝沢。

四暗刻のイーシャンテンからをポンしてテンパイ。

そして、直後に中田からご覧の手でリーチが放たれた。

太の手が止まったのは中田のリーチに対して滝沢が無筋のを切り飛ばした直後だった。

「倍満ツモられ、ハネ満放銃はダメなんですけど、（中田は）北家でドラの北も鳴かれず、そこまでの高打点はなさそうだということで…滝沢に通って中田に放銃できる牌をなんとか捻り出せないか。」

太はそう考えたという。

太の思いがそこにあったというのなら、この場面は納得できる。

共通安全牌は。も1枚切れでトイツ落としは大事故につながりにくい。

だから決して手が詰まったわけではないのに、

太は滝沢の現物であるを抜いて見せた。

しかし、中田へ放銃しに行ったがこれは空振り。

そして、都合の悪いことに、

日向の手に最後のがやってきて中田の待ちは山に売り切れ。

これはほぼ出てこないだろう。

残る1枚は、太の手の中だ。

「滝沢が打の後でをポン、打だった。役牌も枯れているので役は周りのトイトイ。やがトイツのケースが多いなと思いつつ、を両方トイツで持っているケースも否定できなくて決断できなかったんですけど、最後だけ打を考えました。」

 

太が語った内容を踏まえて滝沢の手を眺めてみよう。

その説明の通り、滝沢はとのシャンポン。

だが、が通る確証が得られなかったことから太はを切りきれずに流局。

太にとっては滝沢に対して不安な連荘を許してしまったが、続く1本場を辛くも凌いでトップ奪取。

トップ目の太が実は放銃を求めていたとは非常に興味深い場面だった。

 

巧者は放銃をも味方につけて場を制圧する。