すんなりテンパイとはいかず、14巡目の
引きで醍醐が長考に入った。
精査しているのは、ソーズの何を引けるのか、だ。
醍醐の立場としては、園田にはハネ満を放銃してもラス落ちはなく、基本的には腕を振って上を目指せる状況。園田の出したリーチ棒も含めると、1000-2000ツモか5200出アガリで高宮を逆転して2着フィニッシュだが、狙えるのであれば大介を逆転するハネ満ツモまで狙いたい。
この手をハネ満にするのであればリーチタンヤオピンフツモにあと2翻と考えると、手役であれば自然に視野に入るのが三色で、その場合は
を切って可能性を追うことになる。ただ、
が場に3枚切られているので567にはなりにくい。
一方で、醍醐はソーズを引くなら縦重なりの可能性が大きいとにらんでいたという。それであれば、雀頭を再度ソーズに求めての
切りが出てくる。
麻雀には、考えたところでそもそも正解の道筋がないような局面もある。ただ、醍醐はこのとき、「1個は正解がありそうだった」と思っていた。昨シーズンの主役が費やしたおよそ2分間の思考の末、下した決断は
ツモ切り、ソーズを重ねるルートの選択だった。園田にはマンズが全く通っていなかったが、そんなことはもう関係ない。
16巡目、ようやく醍醐がテンパイ。しかし引いたのはタンヤオもピンフも消えて単騎待ちとなる
。テンパイする11種、赤を含めた13種の中では最悪と言っていい。
こんなテンパイを組むために
を切ったわけじゃない。醍醐は
をツモ切った。残りツモ回数はわずかに2回、しかしそれに懸けた、懸ける価値があると判断したのだ。とはいえ、局が最終盤に差し掛かる16巡目でのテンパイである。この選択ができる打ち手がどれくらいいるのか。
次巡、
引きで再度テンパイ。
単騎待ちでのリーチだったら一発ツモだったじゃないか、なんて野暮は言わない。ツモれば逆転トップのフリテン![]()
![]()
待ちリーチ。
これがなんと、山に3枚も残っていた。しかもタンヤオが消える
が枯れていて、あるのは高目のみ。他の3人には流れず、確率は14分の3。
麻雀的には高い確率に思えるかもしれないが、それでもツモれる可能性は4回に1回もない。
でも、我々は知っているはずだ。
麻雀はときに、確率をやすやすと凌駕する瞬間があることを─
『あれは堂岐がアガらせてくれた、あんなのアガれない』
試合後、醍醐はそんなコメントを残した。
もしかしたらそうなのかもしれない。
しかしそれは決して、人に左右できない力だけでなし得たものではない。
あまりにも鮮やか過ぎる、リーチ一発ツモハイテイタンヤオピンフ裏、逆転トップのハネ満ツモ。
それは醍醐が最後の一瞬まで可能性を追い思考を巡らせ続けた、執念の結晶である。
・・・そういえばフェニックスって、Mリーグチームでも特にこういう奇跡的な、ドラマティックなアガリを繰り出すチームだったよな。
合理と情念、幸運と思考の先にある「感動体験」─
やっぱり麻雀って、Mリーグって、おもしろい!

さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。















