素晴らしい勝者は
素晴らしい敗者が作る
〜猿川真寿、
7度目のファイナルへ
【決勝卓】担当記者:千嶋辰治 2026年8月16日(日)
決勝戦終了直後。
「土田さんと大介さん、逆転の可能性がほとんどない状況でこのスピードで打てることがすごかった。自分で優勝者を決めさせたくないから難しい打ち方を迫られる中で、土田さんに至ってはクロックを5分以上残している。負け役としては完璧。改めて二人の凄さを思い知らされた」
映し出された実況席で、ナビゲーターの梶本啄程氏が熱弁を振るっていた。
それにしても、梶本氏がこんなに熱っぽく語ることは珍しい。
長年に渡って最強戦を見つめてきた梶本氏をも唸らせた決勝戦は、敗者による美しい立ち回りがとても印象的だった。
・最も「風」を知る男、土田浩翔
今回のグループリーグのタイトル「風合戦」は、土田浩翔への当て書きに感じた方は多いと思う。私もそのうちの一人だ。
そして、当の土田もそう感じていただろう。
しかし土田はこのゲーム、ノー和了。
アガリには手が届かなかったが、十分にその存在感は見せつけたのではないだろうか。
象徴的な場面は東3局1本場、ドラは
。
親の木崎ゆうがオタ風の
、
と仕掛けてご覧のテンパイを入れた。
ホンイツ、チャンタ、そして
か
の役がついて12,000の大物手。
浮かせていた
がトイツになってドラ切り。
他家から見ればホンイツか、それともトイトイか。
いずれにしても、このドラ切りはテンパイのサインに見える。
その直後、土田の手がこちら。
4巡目に
を切り、678三色に向かっていたがここでツモ
。
これによりドラを合わせた土田だったが、手には木崎のロン牌が両方とも浮いている。
三色にならずとも、テンパイすればどちらかを選んで放銃… そんな危うさが見える。
土田、程なくテンパイ。
押し出されるのは字牌。どちらを選んでも12,000だ。
しかし。
土田はノータイムで
を河へ放った!
驚愕のノータイムテンパイ取らず。
対局後のインタビューで土田は多くを語らなかったが、おそらく
ツモの時点で「向かい風」を感じていたはずだ。
今回の手牌では両面待ち2組4種類のうち、思いどおりの2種類を都合よくツモらなければ完成しない三色同順。
土田はその難しさから「三色は自らの運気が高い時間帯でないとアガることができない」と考えているのだが、
ツモで崩れたままテンパイを迎えて、
「これは自分の出番じゃないな」
と、悟っただろう。
自らに向かい風を、さらに木崎に追い風を感じた土田は、風が示すとおりに字牌を手から離さなかった。
それにしても、テンパイを取らないまでは良いがこれをほぼノータイムで… 冒頭で紹介した梶本氏が唸ったのも無理はない。
ただ、強かったのは木崎。
土田の粘りの上をいく
ツモで4,000オール。
木崎の肩越しに一陣の風が卓を吹き抜けていく。
木崎の手が開き、自らがやはり逆風に置かれていることを知った土田。
年季の入った風論者である土田ですら逆風を挽回するのはとても難しく、時に自らの道に迷うことがある。
土田の心に迷いがあったのはこの場面を見ればわかる。
南1局、是が非でも手放すことができない自らの親番だ。
比較的早い巡目に土田はテンパイ。
持ち点11,400点。自らの経験から、この手が簡単にアガれるなどとは夢にも思っていない。
では、どうするか?
安め引きのテンパイにリーチなし、とは土田の論。
一気通貫が絡む形でテンパイしなかったため、ひとまずヤミテンとした。











