多井隆晴、卓上を支配する
最速最強のゲームメイク
文・喜多剛士【木曜担当ライター】2026年10月15日
第1試合
東家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
南家:永井孝典(EX風林火山)
西家:竹内元太(セガサミーフェニックス)
北家:逢川恵夢(EARTH JETS)
東1局
親の多井は第1ツモでカンチャンにずっぽりとはまるドラの
を引き入れる。愚形が解消され、リャンメン2組を残したリャンシャンテンとなった。
この局面のポイントは、役牌の
を仕掛けるかどうか。
その後6sを引いてイーシャンテンに進むと、永井から
が放たれる。しかし多井はこれをスルー。巡目が早い段階でポンしても、
・ドラ1の2900点止まり。以前、多井自身から教わった「鳴いて2900はメリットとリスクが見合わないことも多い」という考え方を、そのまま実践するような選択だった。
さらにカン
を引き入れてテンパイ。迷わずリーチを宣言する。多井としてもかなりの手応えを感じていたのではないだろうか。実際、山にはアガリ牌が5枚残されていた。
すると、その期待どおりにあっさりと
をツモ。
リーチ・ツモ・ドラ1の2000オール。親の多井が幸先の良いスタートを切った。
東3局
流局を挟み、3本場で供託2本。東2局の3900のアガリで35,800点のトップ目に立った多井が迎えた局面。
3巡目、多井は
をツモると頭をかきむしりながら
を切った。まだ3シャンテンとはいえ、残る形は3や7を引かなければ進まないペンチャンやカンチャンばかり。アガリまでたどり着くのは難しく、この時点でトップ目である事から早々に見切ってオリを選択。
多井の守備力の真髄は、アタリ牌を一点読みで止めるような派手な技術だけではない。危険を早い段階で察知し、十分な準備を整えられる見切りの良さにある。
野球で例えるなら、横っ飛びで好捕するファインプレーではなく、打球の飛ぶ場所を読み切り、安打性の当たりを正面で処理するような守備。危険になる前から備えているからこそ、大きな失点を防げるのだ。
その後、多井が早めに処理した
を永井がチー。多井としては永井のアガリによる局消化は許容範囲。むしろリーチが入る前に鳴けそうな牌を放し、仕掛けを誘発することで永井の打点上昇を抑えたい意図もあったのではないだろうか。
一方の元太は、赤2枚の手牌からドラの
を引き入れ、6ブロックとなる。萬子のカンチャンを払いたい形だったが、6mは永井に打ちにくい。
永井はチーの後に
を手出ししており、ドラの
を対子で抱えている可能性も考えられる。ここで元太は手組みよりも守備を優先し、
を選択。元太の守備意識が表れた一打だった。
その後も多井は永井に甘い打牌はなく局面をコントロールしながら流局。
この局は、多井の見切りの早さと局面判断の巧みさが光った一局だった。無理に勝負せず、相手に仕掛けさせて打点を下げ、そのまま静観する。トップ目としての盤石な立ち回りが際立っていた。
東4局
多井は5巡目にカン
待ちでテンパイ。ドラ1のテンパイで、待ちこそカンチャンだが局収支だけを考えればリーチが優位な場面。
現在はトップ目。局収支ではリーチが優位だとしても、多井は「ここで無理に点数を取りに行く必要はない」と考えたのかもしれない。手変わりを待ちながら静かに局面を見守る。
ここまで好配牌やドラが手に入ってもなかなかアガリに結び付いていない逢川には、ドラの
が暗刻となる勝負手が入った。何度もチャンスを逃してきただけに、「今度こそ」という気持ちもあったのではないだろうか。
元太は
を引き入れ、
待ちの七対子でテンパイ。河にも七対子特有の違和感はない。
すると多井も
を引き入れ、狙い通り平和形へ変化。ここで満を持してリーチを宣言する。
トップ目の多井も勝負に出る。
永井は
を安全牌候補として抱えていたが、2軒リーチを受けて
が打牌候補だったが直後に
をツモ。
は先にリーチした多井に通っているため、ひとまず打
を選択。
を切るのも時間の問題かと思われた。
ところが、その前に逢川が
をツモ。
ドラ3の勝負手で打点も十分。
は1枚切れで、比較的通りそうにも見える牌だった。逢川は、ここで
を打って前進を選択する。
しかし、その
が元太のアガリ牌だった。
リーチ・七対子の3200点。
ドラが集まりながらもアガリに結び付かない苦しい展開が続く逢川。そして永井は、あと1巡ズレていれば放銃していた可能性もあるだけに、「危なかった」という心の声が聞こえてきそうな一局だった。
結果は元太のアガリとなったが、多井の手変わりを待つダマテン判断、永井の冷静な対応、そして逢川の勝負手が実らない苦しさと、それぞれの思惑が交錯した印象的な局となった。
南1局2本場












