その左手は誰が為に
大きな背中に不死鳥の羽を宿し
甦れ近藤誠一
文・後藤哲冶【金曜担当ライター】2022年11月18日
Mリーグは開幕から約1ヶ月半が経過しようとしている。
昨日の試合では最下位に低迷していたドリブンズが2連勝したこともあって、チームポイントランキングは大きく変動した。
これが本日の2試合目が始まるまでの8位から4位までがかなり近いポイント差。
まだまだレギュラーシーズンは長いといえど、下位4チームからすれば、上位陣に大きくポイントを突き放されていく展開は、全員望むところではないだろう。
11月18日第2試合
東家 内川幸太郎 (KADOKAWAサクラナイツ)
南家 二階堂亜樹 (EX風林火山)
西家 仲林圭 (U-NEXT Pirates)
北家 近藤誠一 (セガサミーフェニックス)
今日のこのメンバーの中で、今シーズントップをまだとっていない打ち手が一人だけいる。
近藤誠一だ。
ここまで7戦戦ってトップ無し。ラス2回。
奇跡を生み出すその左手に、未だ輝きは見られない。
大きく打って大きく勝つの言葉通り、手が入る時を待つ我慢の麻雀が近藤の得意とするところだが、これでは我慢が長すぎる。
そろそろ爆発しても良い頃だ。
東1局、結果がなかなか出ないとスタイルを少し変えていく選手もいるなかで、近藤の姿勢は一貫している。
この手牌から仲林の切ったをスルー。
この程度の手牌では当然動くことは無い。
そうして手牌を淀みなく育て――
このイーシャンテンに。
タンピン三色まで見える勝負手牌に育てきった。
この手牌はアガリにこそ至らなかったが、そのスタイルは微塵も変わっていないことがよくわかる1局だった。
この局は亜樹と仲林のリーチ勝負になり、亜樹が2000、4000をツモ。
東2局、前局で近藤の打ち方にブレがないことは分かった。
あとは、結果を残すだけ。
親の亜樹からのリーチを受けて、この手牌。
ドラのが対子の勝負手だ。
目に見えていらないのは。は引きの際に待ちを選ぶことができる。
まだ亜樹の河にはそこまで通っている牌が多いわけではない。
ここはを押していく。
これが通らない。
どころかなんとウラウラは18000。
一つ、息を吐いた。
この時近藤の中にはどんな感情が渦巻いていたのだろうか。
落胆か、焦りか。
近藤ほどの選手であれば、この程度の経験は数えきれないほどあるだろう。
それでも、このMリーグという舞台で、こうも厳しい展開が続くのは精神的に辛い。
まるで先の見えない真っ暗闇の中にいるようだ。
東2局1本場、この局は仲林の手順が冴え渡る。
ここから迷わず切り。
一見、手牌はリャンメンが2つのイーシャンテンに見えるが、ここにもし、を引いてくると……
を切っていわゆる暗刻ヘッドレスのイーシャンテンに変化する。
これで先ほどまでと同じの待ちに加えて……