西原理恵子 & 山崎一夫 ギャンブルは落ち目のヤツの 逆に張れ! 落ち目のヤツの足を引っ張れ!!

さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門【第5回】

ギャンブルは落ち目のヤツの 逆に張れ?

かつて東京中に地下カジノがあったころの続きです。
西原さんと末井さんと、島本さん(なめだるま親方)とぼくは、よく勝負にでかけてました。
突撃隊長は、だいたい末井さんか西原さんの役割です。
その日は末井さんが特攻隊長で、毎回大金を賭けて血まみれになっておりました。

「か~、またダメかあ…山ちゃんはこんどはどっちに張るの?」

「うーん、考え中」

「西原さんはどっち?」

「ちょっと様子を見ようかな」

島本さんは、末井さんから目をそらしてます。

「よっしゃ、こんどこそバンカーに違いない。チェンプリ!」

財布から、新たなズク(札束)をつまみだしてチップに両替。チェンプリというのは、高田馬場のスラングで、チェンジ・プリーズの意味。

末井さんが大量のチップを張って、今回もベットオーナーです。
ベットオーナーとは、一番多く賭けた人のことで、カードを絞る(代表でめくる)権利が与えられる。

バカラで負けが込んでる人には、この絞り中毒が多い。
この時は、末井さんと同じバンカーに、末井さんよりも多く賭ける人が現れました。
すかさず末井さんは、チップを積み増しして、ベットオーナーの権利を維持してました。

で、ぼくら3人はといえば、そ~っと末井さんとは逆のプレイヤーにチップを移動。

「プレイヤー・ウィン!」

「チキショー!」

頭をかきむしる末井さんを横目に、他の3人はこっそりと目くばせをしたのでした。
これがいわゆる

「ツカないヤツを的(マト)にしろ」
「落ち目の逆に張れ」

という、世界共通かつ昔からのギャンブラーのセオリーです。

ギャンブラーのセオリーと書きましたが、ギャンブルのセオリーといえるほどのものではありません。
仮にこのセオリーが本当だとすれば、

「ツイてるヤツに乗っかれ」

というセオリーも成り立ちそうですね。

実際、これも世界のカジノで実践されてるし、かつての日本の地下カジノでもよく見かけました。
どちらも数学的な根拠は少なそうですが、少なくとも、不ヅキの的にされる人にはなりたくないものです。

 落ち目のヤツの足を引っ張れ

先のセオリーは、ルーレットなどの機械式ギャンブルでは役にたちませんが、対人ゲームではかなり影響力があります。
ここでいう対人ゲームとは、単に目の前に人間がいる、ということではなく、お互いに自由に戦略が選択できて、それが結果に影響を与えるという意味です。

たとえば麻雀の場合だと、まっすぐに攻撃するのか、ていねいに降りる(守る)か、などの選択がそれ。
負けが続いている人は、一気に取り返そうとして、相手の攻撃に対して無謀な勝負に出ることが多い。
麻雀は4人でやるゲームなので、こちらは逆に無理をしないでケンを決め込むのも一法。

負けてる人がさらに負けを引き受けてくれれば、こちらのケガを小さくできます。
マンション麻雀などの大きな賭け麻雀のプロは、

「不ヅキな朝までヤツは浮かばせない」
「今夜の負け頭はヤツだ」

という作戦を取ることがある。

しかも、3人が暗黙の了解で1人の足を引っ張るんです。
実際には、朝まで足を引っ張らなくても、途中からは勝手に転落していくのが普通だそうです。
ただし、一時的に連合軍を組んだからといって安心はできない。
自分がツイてないヤツだと思われたら、今度は自分が的にされてしまうのだ。

つことで、以下、不ヅキのパターン負けパターンをいくつかご紹介しますので、思い当たることがあったら気をつけてください。
ここでいう不ヅキとは、精神のバランスが崩れて、自分本来の実力が発揮できなっくなっている状態。
しかも加速しながらスパイラル状に落ちて行くような状態です。
カードやサイコロの目のことではありません。

●今の負けは実力じゃない、と思う。
●負けが続いて、一気に取り返したい。
●小さい勝利が嬉しくない。
●予定の時間をとっくに過ぎている。
●ケイタイが鳴っても出ない。
●予定外のお金に手をつけた。

●自分の逆を張る人が増えた。
●ツイてる人に乗ろうとしたら逃げられた。
●希望的観測ばかりが頭に浮かんでくる。
●結果は絶望的。
●「ツイてなかったね」と慰められる。
●「今度こそ目が出るよ」と励まされる。
●裏目がデジャヴーのように見えて、そのとおりになる。
●オシボリを首に乗せて勝負を続けている。

●オシボリを人差し指に巻いて、歯を磨く。
●ポケットやフトコロにしきりに手をやる。
●金を貸してくれそうな人を物色する。

●すでに借金をしている。
●少し勝ったけど借金は返したくない。
●風景がゆがむ。 
●どうせなら⇒いっそのこと、というフレーズが脳裏に浮かぶ。
●パトカーのサイレンが聞こえる。

7つ以上で立派なドツボです。

(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2010年8月1日号)

●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/

さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門は毎週水曜更新!!(次回は7月11日更新予定)

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