さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門【第6回】
博打は 出世の早道じゃ!
西原理恵子さんと、末井昭さんは、かつてお互いにチンチロリンの良き勝負相手でした。
チンチロリンというのは、ドンブリの中に3つのサイコロを振って、その出目を競うという日本古来のお手軽ギャンブルです。
「チンチロリ~ン」
という涼しげな音とともに、暑苦しい勝負をするのが名前の由来。
このギャンブルは、ごく手近かな道具でできるし、回り胴といって、親を交代でやるので、参加者全員に平等なチャンスがある。
数あるギャンブルの中で、決して裏社会の人たちが関与しない、とても健全なギャンブルなんです。
「勝負! チンチロリ~ン」
一番強いの役はゾロ目で、サイコロの目が3つとも同じに揃った時。
中でも1のピンゾロは配当が5倍。
次に強いのがシゴロ。名前のとおり、目が456と揃った時で、配当は2倍。
逆に最も弱いのは123のヒフミで、支払いが2倍の大赤字です。
これらは特殊役で、たいていは1から6までの出目の大きさで勝負。
113なら3が出目。665なら5が出目で大きいほうが勝ち。
高田馬場のバーで年配のママを交えて、明け方まで勝負したことも良くありました。
以下、西原さんの言動です。
「ウラーッ、シゴンロク!」
自分がサイコロを振る時は、ロシアの突撃兵のような掛け声をかけます。
「シャーッ 6のかっぱぎ!」
どんぶりの周りにある、賭け金をひったくります。
かっぱぎというのは、親の総取り、あるいはギャンブルでのバカ勝ちのこと。
追い剥ぎの剥ぐに、接頭語がついてるんでしょうか、ちょっと下品ですね。
逆に末井さんが振る時は、
「ヒッフッミーッ」
と呪いの声をかけます。
その勢いに動揺して、末井さんはサイコロをどんぶりからコボしてしまうチョンボ。
「はい、ションベン出たー!。末井さんの総付け(全額負け払い)ね」
「今のは西原さんが邪魔したからだよ~」
「やかんしゃい! 早く払え、頻尿じじい!」
かなり下品です。
チンチロリンは、公平なギャンブルなので、お互いの同意さえあれば高レートは可能。
西原さんたらかなり無謀で、熱くなってくると、札束を輪ゴムで巻いて、恵方巻き(太巻き寿司)にして賭けたりしてました。
末井さんに至っては、ドンブリいっぱい、牛丼特盛り状態に●●円札を張るんです。
「西原さん、この大勝負受けてくれるかな?」
「むむむ、いいよ」
サイコロを持つ手が、プルプルしてます。
「しょっ、勝負!」
「カチーンッ」
気合いを入れすぎで、サイコロがどんぶりを飛び出してションベンだ~。
「きゃ~っ」
余談ですが、ぼくは西原さんを末井さん相手に、密かにチンチロリン必勝法を発見してしまいました。
それは小さめのどんぶりを使うだけ。ふふふ。
ある日試してみたら、見事に成功。
西原さんは5回に1回くらいの頻度でションベン。
「ううう、今日はこれくらいで勘弁したるわい!」
と、泣きながらお家に帰ったのでした。
あなたもすぐなれる ギャンブル依存症
人のことを言える立場ではありませんが、西原さんも末井さんも、一時はどっぷりとギャンブル依存症(中毒)になってました。
3人で仕事の打ち合わせが終わった時のことです。
「チンチロリン、ちょっとだけやりたいね」
と末井さん。
「でもサイコロがないよ」
とぼく。
末井さんはニヤリを笑い、おもむろにポケットからサイコロを3つ取りだしたんです。
あ、西原さんまで。
2人の中毒ぶりにあきれはてたぼくは、やむなくフトコロから、用意しておいた小さめのどんぶりを取りだしたのでありました。
前回の負けパターンの中には、ギャンブル依存症の特徴もいくつか含まれています。
今回はその他に紹介します。
●ギャンブルの専門用語を日常的に使う。テッポウなど。
●一人でいると、パチンコのリーチ音が聞こえる。
●着メロにビッグボーナス音。
●次に負けたら、お金が払えないと分かっていても、やめられない。
●負けたらすぐにお金をおろしてきて、勝負を続ける。
●生活費より軍資金の心配をしている。
●消防署の半鐘が、競輪のジャンに聞こえる。
●チンチロリンのためなら、国宝「曜変天目茶碗」でも使う。
●チンチロリン用のサイコロが無かったので、ケシゴムで作った。綺麗にできたけど、音が出ないので寂しかった。しかもゴムなのでションベン飛び散るし。
このうち3つ以上思い当たるようなら、立派なギャンブル依存症です。
特に音が聞こえるというのはマズイ徴候です。
「ピンポーン、リーチ」
やがてテーブルの上で、米粒くらいの大きさのピンクの象たちが現れ、麻雀牌をかついで大名行列をするのが見えたりするそうです。
「パオーン、君もいっしょに行こうよ」
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2010年8月15日号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/
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