多井隆晴プロから学ぶ 徹底的に敵をへこます法 Mリーグチェアマン・藤田晋の著書「仕事が麻雀で麻雀が仕事」とは。
「藤田は勝負強い!」
ビジネスの世界でもそう呼び声の高いサイバーエージェント・藤田晋社長による「勝負強さ」を身につけるための実践記が麻雀ファンだけでなく、麻雀を知らないビジネスマンの間でも話題を集めている。キンマWebでは2018年8月に発売された著書
「仕事が麻雀で麻雀が仕事」
の中から、作者・藤田晋氏が特に伝えたい、麻雀を知らない人が、麻雀に興味を持ってもらえるような記事を抜粋して紹介していきます。
【徹底的に敵をへこます法】
私が社会人に成り立ての頃、「徹底的に敵をへこます法」というビジネス書が流行りました。競争相手の心を折るような戦略の数々が、ユーモアを交えて紹介されています。
私の経営戦略の考え方に影響を与えた本でもあるのですが、それは麻雀にも通じるものがあります。
以前、とある対局で南一局、私は点棒を減らし劣勢で最後の親番を迎えました。受け取ったのは願ってもない好配牌。嫌が否にもここが勝負どころと力が入ります。ところが東場は時間をかけてじっくり手作りをしていたはずの多井隆晴プロ(※)が、突然1巡目から仕掛け、あっという間に役牌のみ手で私の親を蹴ってしまいました。後から多井プロにその場面について聞いてみると、「急に危険を察知したんだよね」と笑っていましたが、実際、そこで心を折られたことが敗因となって負けました。
麻雀で自分の選択が正しいかどうかを判断するとき、相手の立場に立ってみて、「どちらが嫌か」を想像すると答えが見えてくることがあります。多井プロは恐らく力が入っている親番の私を見て、さっと流してひとり潰しておく選択をしたのでしょう。
逆にさっと流してもらえれば有難い局面もあります。ダントツの時は誰かが軽く流してくれれば有難く、じっくり手作りをされるほうが嫌です。そういう時の他家は基本的には腰を重くして打つべきです。
ビジネスの世界でも、競争相手が嫌がることは戦略として正しいことが多いです。
例えば、頭脳明晰なチームを揃えるか、超気合い入ったチームを揃えるか、どちらが競合相手として嫌かを想像して、超気合い入ったチームだとしたらそれが正解です。頭がいい経営者ほど、論理や合理に惑わされ、こんな単純なことを間違えやすいです。
麻雀も牌効率や場況判断ばかりでなく、誰の心が折れるのか、誰がへこむのかを想像することが実践では大事だと思います。
人が嫌がることばかり想像していると性格が悪くなりそうですが、それが勝負というものです。単なるお人好しではどの世界でも勝ち残ることはできません。
でもそれはゲーム中だけの話です。ビジネスも麻雀もスポーツと同じで終わればノーサイド。ゲームで人が嫌がることを想像する力を培って、日常生活では人が嫌がることはやめましょう。
【多井隆晴プロ】最速最強の異名をとるが、打ち筋は自在で相手より1巡早くアガることを理想としている。RTDマンスリーリーグ2016で優勝、著書『多井熱』の中でもRTDリーグや著者について多く書いている。