熱論!Mリーグ【Fri】
市民白鳥の革命!
黒沢咲、高貴で
あるがゆえの責任
文・阿部柊太朗【金曜担当ライター】2018年12月14日
ノブレスオブリージュ(noblesse oblige)というフランス語がある。
「高貴さには責任が伴う」という意味を持ち、特権階級の人々への社会的責任や倫理観を問う言葉である。
高貴と言えばもちろんこの方。
セレブ打法と称される豪華絢爛な手作りがハマり、ここまで個人成績で200ptオーバーの成績を残している。
開局の黒沢の手牌、4巡目にのポンテンを取れるイーシャンテン。
早い巡目にをポンして待ちのテンパイをいれれば、相当アガリが見込めそうな2,000点だ。
直後に滝沢から噂のが放たれるが、当然ピクリとも動かない。
黒沢はこんなを鳴いて勝ってきたわけではない。
すると次巡、を引き入れてをトイツ落とし。
これぞ高貴なるセレブ打法。2,000点の手をたった1牌でハネマンのイーシャンテンに進化させた。
しかし、あのを鳴かないということは先制のチャンスを放棄するということでもある。
黒沢が手作りをしている最中に、先制のリーチをかけたのは滝沢。
とのシャンポン待ち。
黒沢もテンパイで追いつくが、一手遅れたことがあだとなった。を掴んで滝沢に2,600点の放銃。
高いアガリを求めれば、失点をする機会も増える。ノブレスオブリージュ、高貴さには責任が伴う。
これは麻雀というゲームにおいて当然の性質であるし、黒沢とてこれくらいの失点は織り込み済みだ。
時には重い責任を背負って、貴族の道を歩く。それでもってここまで+218,8ptという結果を残しているのだ。
一方、なかなか結果に恵まれない男がいた。
ここまで個人成績は-193.3ptと、うだつの上がらない状態が続いている。
勝利のために、何か変革が必要なのではないか?
本人はそう感じたのだろう。その変化はすぐに見えた。
東2局、白鳥の手牌。局も終盤に差し掛かかろうかという11巡目のできごと。
滝沢の切ったをポンして、片アガリの3,900のテンパイを取らなかった。
白鳥「いつもなら鳴いてるかも。最近結果を残している黒沢さんの打ち方を研究して、意識しました。小金持ち打法ですかね(笑)」
黒沢がこのMリーグという舞台で結果を残していることには必ず理由がある。だからこそ、黒沢の打ち方の中に勝利のカギが眠っている。そう考えたのだろう。
鳴かない未来には絶好のが眠っていた。
力強く待ちでリーチに踏み込み…
親の追っかけリーチを振り切って2,000・4,000のアガリに結び付けた。
ノブレスオブリージュ、黒沢は思いもよらないところで高貴であったがゆえの責任を取らされた形となった。
迎えたオーラス、トップからラスまで5,000点差の緊迫した局面。
10巡目にピンフ高目イーペーコーのテンパイを入れ、白鳥は長考。
ダマに構えると茅森・滝沢からの安目ロンでは2着のまま。リーチをかければどこからアガっても無条件でトップになる。しかしリーチ棒を出すことで瞬間3着に落ちる上に、滝沢・茅森の押し返しによる4着落ちのリスクを背負わなければならない。
ノブレスオブリージュ、高貴にはリスクが伴うものだ。
白鳥は25秒の沈黙の末に「リーチ」と宣言。
リスクの先に、がいた。
いつもよりほんの少しだけ強くを卓に置くと
笑顔を抑えきれないといった表情で「1,300・2,600」と申告。