熱論!Mリーグ【Tue】
心揺さぶられるテンパイ外し
自分のためだけに打っていた
ネット雀士・朝倉康心が
俺たちの英雄になった日
文・ZERO【火曜担当ライター】2019年2月12日
対戦カードに「79/80」が並んだ。
そう今夜はXデー、レギュラーシーズン最終日。
どうしても注目を集めてしまうのはpiratesだ。
ファイナル進出となる4位に食い込むことができるのか。
4位、ドリブンズとの差は130.5pt。
46000点ちょっとのトップが2回必要で、ギリギリ現実的なラインと言える。
その注目の1回戦に朝倉康心が登板した。
彼は我らが天鳳界の希望の星である。
「天鳳」というのは、パソコンやスマホで麻雀をプレイすることができるオンラインゲームで、現在500万ID弱のアカウント登録があり、多くのプロもプレイしている。
オンライン麻雀ゲームとしては最高峰と言えるだろう。
朝倉はその天鳳の頂点に君臨する男なのだ。
麻雀というゲームの性質上、普通は
「あいつより俺の方が強い」
という声が出がちだが、朝倉に関しては誰もがその傑出した実力を認め「天鳳界の希望の星」という表現は誇張表現でもなんでもないのだ。
牌譜が残り、何千戦と打ったうえで成績が評価される。
特にその段位制度のシビアさは有名で、最後の試練である十段となると、
トップ+90 2着+45 3着±0 4着-180
というポイント配分になる。
1回ラスを引くと2回トップをとってもチャラ、というファミコン「スペランカー」を思い出させるような難易度だ。
これを2000ptからはじめて4000ptまでたどりつくと「天鳳位」になることができる。
(0ptになると九段に降段する)
筆者はこの「十段坂」に5回チャレンジしたが、5回とも全て失敗に終わった。
しかし朝倉は筆者よりも少ない対戦数で軽々と2回「天鳳位」を達成したのだ。
天鳳の歴史も長くなるが、2回達成したのは朝倉だけであり、私を含む全天鳳民からすれば朝倉は雲の上の存在なのだ。
天鳳で活躍を続ける朝倉を見て、我々は常々思っていた。
「朝倉がプロの世界に入り、トッププロ達と囲まれたらどうなるのだろうか」
そんな夢が1年のうちに具現化するとは誰が思っただろうか。
この日、業界の重鎮・土田浩翔プロが朝倉の選択を解説しているのを聞いて、感慨深くなってしまった。
さて、天鳳の紹介が長くなってしまったが、運命の1回戦をみていこう。
開幕、親の滝沢のリーチを受けた場面。
朝倉は山にいそうなを重ね、チートイツのテンパイ。
朝倉は待ちでリーチ。
ごくごく普通の選択に見えるかもしれないが、通常時の朝倉ならオリやダマの選択をとっていたかもしれない。
いくらテンパイとはいえ、滝沢がのトイツ落としをしての親リーチだ。
分が悪いのは明白で、巡目が深いことからオリのルートを残したくなる。
しかし、トップしか意味をなさないこの特殊な最終戦においては、打点を追うこととともに、親のリーチを蹴ることに大きな価値がある。それをわかっている朝倉は迷わず追っかけに踏み切ったのだ。
安全牌に窮した茅森からがこぼれ8000のアガリ。
先ほど紹介した天鳳の十段配分を見るとラス回避が重要であり、当然朝倉はラス回避の達人のように称されることが多い。しかし実は朝倉は生粋のゲーマーであり、いろんな状況で最善手を見つける対応の達人とも言えるのだ。
東2局1本場。
またしても親リーチを受けた場面。
現物はしかない。
朝倉は少考し、が3枚切れなのを見てを打った。
比較的マシな牌を打ちつつ、シャンテン数を維持する選択。
攻めの姿勢は崩さない。