届かない「あと1牌」どんなに報われなくてもリーチを打ち続ける高宮まりの覚悟【熱論!Mリーグ/FS第1節】

熱論!Mリーグ【FS第1節】

届かない「あと1牌」

どんなに報われなくても

リーチを打ち続ける

高宮まりの覚悟

文・ZERO【FS第1節担当ライター】2019年3月2日

 

——あまりにも長かった。

あの興奮のレギュラーシーズンが終わってから3週間弱が経つ。

その間に大きな発表があったことをみなさんはご存じだろうか。

 

ファイナルシリーズのスポンサーに「朝日新聞」が付くことになったのだ。

この意味は非常に大きい。

朝日新聞と言えば日本を代表する新聞社。

おそらくファイナルの結果が朝刊に掲載されることになるだろう。

世に広く認知され、もしかしたら海外メディアも注目するかもしれない。

それだけではない。

 

 

ファイナル開幕の朝、超有名ボクシングマンガ「はじめの一歩」とMリーグがコラボし、スポーツ新聞7紙に広告を出しているのだ。

こうした企業努力のおかげで、今まで「暗くて危険な賭け事」として日の目をみなかった麻雀が、

「熱くて面白い知的スポーツ」

として世に認められつつある。

そのことを強く感じた出来事が…

 

 

しょこたん(中川翔子)が麻雀にハマっていることをTwitterでカミングアウトしたことだ。

しょこたんは生粋のゲーマーなので、対応力もあるし上達も早いと思う。(何様)

そして麻雀の魅力を知ってしまったらなかなか抜け出せないであろうことも想像に難くない。

そんな話ではなくて、このようにアイドルや著名人が平然と「麻雀がマイブーム!」って世に発信できる環境を作ったのがMリーグの大きな功績だろう。まだ半年しか経っていないが、世への麻雀の浸透度は、加速度的に大きくなっていると確信した。

こうして、期待感が溢れる中、ファイナルの放送が始まった。

最初に流れたのが、レギュラーシーズンをまとめたようなダイジェストだった。

これを見ているだけで感動が蘇ってくる。

 

 

 

 

風林火山の安定感、格闘倶楽部の復活、ABEMASの浮き沈み、ドリブンズの生き残り…

いろいろな出来事があったことを思い出した。

そして最終的にファイナルに向けてポイントはこうなった。

 

レギュラーシーズンのポイントは半分になり、1位から4位まで145.2pt。

ここから24戦することを考えると、ポイント差はほとんどないようなものだと言ってよい。

ファイナル1回戦のメンバーは

コチラ。

むむ…そういえば、熱闘Mリーグで、鈴木たろう選手は好みの女性のタイプを「顔は二階堂さん、体は高宮さん」などと言っていた。

気持ちは非常――――にわかるが、これは逆に2人に対して失礼であり、ゼウスの凡ミス(&編集の悪意)と言えるだろう。麻雀で例えると、357のリャンカン系から5を切るようなもの。1つの打牌で2つの受け入れを消す選択はかなりの悪手になるのだ。

たろうは当事者である2人に囲まれて気まずくはないだろうか?私の心配をよそに対局は始まった。

東1局が流局した直後の1本場だった。

亜樹の7巡目

直前のをチーせず、このテンパイ。は1枚切られてしまっているが、が2枚、が3枚見えており、は待ちとしてそこそこ良さそう。を切ってリーチを打つ人も多いと思う。しかしというか、やはりというか

亜樹は静かにを縦に置いた。

このまま供託を回収する2600点のアガリも悪くないし、がくっつけば待ち・打点共に優秀な手になる。

アガれるか微妙な手牌では手牌を短くしたりリーチを打ったりなど、運命を危険な方向には委ねない、亜樹らしい安定した打ち回しだ。

すぐにたろうからリーチが入るも

同巡に亜樹がツモって1000・2000。

(誰が顔だけやねん)

と怒っているかはわからないが、ツモったのはたまたまの結果で、リーチに対しても押し引きを自分の手で決めることができるのはダマの利点でもあるだろう。

これまでの戦いを見て、亜樹のダマ判断が臆病に映ったこともあったが、半端な手に身を任せず、手替わりを待ちながらも、思考を放棄しないことの方が勇気を必要とするのでは…と思い直している。

一瞬の出来事だったが、亜樹の持ち味が存分に出た1局だった。

次の局。

親の高宮はこの手牌で対面から打たれたをスルーする。

マンズが伸びてのイッツー、もしくはタンピン系を睨み、より高打点を狙った選択だ。

しかしこのときが3枚打たれていた。

それならば打点上昇の幅も狭く、8巡目ということを考えるとポンして親の連荘を狙った方がよいと感じたがどうだろうか。ポンしたときとしなかったときの速度差がかなり大きい。

一方で

をポンしてバックのマンガンテンパイをいれる亜樹。

亜樹はさきほどの局ののチーテンをとらないくらいなので、鳴いたときはこれくらいの手牌が入っていることは誰もが共通認識として持っている。

というわけで場に緊張感が走った。

終盤、さきほどをスルーした高宮が

そのをアンコにしてテンパイ。

しかし亜樹の現物であるを切ってダマテンに構えた。

が合計で5枚見えており、待ちとしては愚形以下。ぶつけられる巡目ではないという判断か。

次に

を持ってきた。

はフリテンだが、さきほどより待ちとしてはかなり優秀。

しかし高宮はこれでも、待ちを拒否してを切った。巡目が深いということと、亜樹の鳴きに対する警戒心の高さが伺える。

(どこいったん?私の

と亜樹が思ったかはわからないが、

高宮の手元へ、そのがやってきた。

ここでを止め、を切ってリーチ!

はまだ山に1枚あり、これをツモればビッグプレーになる。

テンパイしていたたろうはオリ、高宮にハイテイが回る…!

 

 

しかし流局に終わった。

高宮も生半可な手牌ではリーチをせず我慢を重ね、ここぞというところで牙をむき反撃した。

(余計なこと言うんじゃなかったなー)

とは、1人ノーテンになってしまったたろう。

迎えた2本場。

3巡目

高宮はこの手牌からを切った。

ちょっと気の利いた打ち手ならを残してピンズのペンチャンを払い、守備力を高めながらソウズのホンイツをみたりしそうな手牌だ。しかし高宮はなりふり構わずメンゼンリーチを目指した。

その姿勢が奏功しペンを引き入れ

10巡目に最速のテンパイを果たした。

このメンピンドラ1を当然のリーチ。

レギュラーシーズン、高宮は勝負手のリーチが何度滑ったかわからない。これをアガればトップに大きく近づく…というめくりあいにとことん敗れ、結果的にトップ1回で終わってしまった。

どれくらいリーチを打てば報われるのか。

あと1牌、その1牌があまりにも遠い。

しかしその高宮にようやく

「あと1牌」が手元にやってきた。

赤をツモって裏ものっけての6000オール。

(誰が体だけやねん)

(いやだからあれはそういう意味じゃなくて…)

と、いうやりとりがあったかはわからないが、私が一番印象に残っているのは次の局だ。

たろうがメンピンドラドラので先制リーチ。

すぐに

高宮が追いつく!…といってもドラ表示牌のペン待ちだ。

しかも、テンパイするためには赤を切らないといけない。

しかもしかも、自分は今のアガリでトップ目に立ち、たろうはラス目である。

全ての条件が悪いように揃っている。

しかし高宮のベルセルクの部分が覚醒したのか

間髪入れずにを場に放ち、ペン待ちで追っかけた!

おそらくチームメイトの寿人も同じ選択をとるはずだ。

もっと早い速度で(笑)

まず東場の40000点台では、トップをとるためには微妙に心もとない。

また赤にくっつけようとを払っていくのはより危険である。

仮に一発でマンガン…と言われてしまってもまだ36800点残る。

どうせツモられても親被りだ。

そう、これはピンチであり、チャンスでもあるのだ。

点棒に余裕があるうちに決定打をアガる抽選を受ける、高宮の素晴らしい攻撃的な選択。

 

結果はたろうのハネ満ツモになってしまったが、何回かに1回は高宮のアガりになり、それは半荘の勝者を決定づけるアガりになったはずだ。

高宮の戦う姿勢に、いつかトップを量産する日が来ると確信した。

 

南1局1本場

その高宮に難解な手牌が訪れる。

2巡目。みなさんなら何を切るだろうか。

ドラがで123の三色が見えるが、三色部分にアタマがあるとなかなか三色にならない。それでも高宮はを切った。

そして次巡

ツモ。ここも非常に難しいが、ドラを使うことを決める打とした。

さらに次巡。

ツモ

どうしていいのかわからなくなってくるが、高宮はを切った。ペンチャン×ペンチャンのこの手牌をイーシャンテンとは捉えず、123や234の三色を追いつつも直接ロスの一番少ない選択を取った。私ならを切ってしまいそうだが、この残したが結果的に活きる。

次巡。

ツモ。このツモでグッと楽になった。123部分以外でアタマができるとアガリへのルートがクリアになってくる。ここで打つのは…

 

当然だ。

ツモで三色確定のテンパイ、ツモでのリャンメン変化も残る。

難解な手牌を捌き切り、亜樹から値千金となる5200のアガリ。

今まで打てなかった二の矢が打てた。

しかしたろうが親マンをアガるなどで食い下がってくる。

そんなたろうと高宮とのデッドヒートで迎えたラス前。

親の高宮の手牌。

直前に切られたをスルーしている。

このスルーは東場のスルーと違い、好判断に映った。

まず下家の多井がちょっと前に

ここからを暗カンしている。

2巡前にを切っているので、からを切ったということだ。これは他にアタマ候補が複数あり、形がそこそこ整っていることを示している。(実際にイーシャンテンである)

再び高宮の手牌に戻すと

ドラも赤もない手だ。

しかも今にもリーチのきそうな多井に対する安全牌もだけである。

そしてをポンするリターンは1500点のアガリに近づくこと。

安い手で連荘しても、たろうに逆転される可能性のある局を増やしているだけとも考えられ、それならば守備的に構え、先制できるようなら一発やカン裏に期待してリーチを打ち、決定打を目指す…という攻守兼用のスルーなのだ。

ペンで情熱的に追っかけたときとは違う、非常に冷静な判断だと思った。

こうして、多井とたろうのリーチがかかり、高宮はしっかりとオリて流局。

僅差でオーラスを迎えることになる。

高宮とたろうはアガリトップだ。

まず

たろうにズルい配牌が入る(笑)

他家は遅く、圧倒的な速度差だ。

しかし高宮も追いすがる。

親の多井の一打目のを果敢にポン。アタマがないとか形が悪いとか、もうなりふり構っていられない。役が付いてメンツが完成するのだから、当然のポンだ。

そんな中、やはり一番手は予想通りたろう。

ピンフダマか、いずれかのノベタンでリーチか。

が2枚打たれており、はほとんど愚形みたいなものだ。ここで高宮や多井は一切オリることはないだろう。ならば…

より、使いにくい牌であるでリーチ。

次巡、高宮にも

テンパイが入る!!

なんとあそこから追いつくとは!

をぶった切って全面戦争の構えをとる高宮。

今までトッププロ達に囲まれて、オーラスにこのようなめくり合いに持ち込むことすらできなかった。大事なところでアガリを逃し、致命的な放銃をし、そしていつか牌の巡り合わせにも嫌われるようになってしまった。

しかし経験を積んだ高宮は、このファイナルの開幕戦で、堂々と戦うことができているように見える。

字牌を切ってなりふり構わず手にした6000オールの後にもペンで果敢に決定打を狙い、難解な三色を捌き、ラス前はしっかりとをスルーして親を流した。

ツモ。当然ツモ切り。

ツモ。当然ツモ切り。

彼女の心中を察すると、胸が痛くなってくる。

もう少しでチームにトップを届けることができる。

名だたるトッププロにひけをとらない戦いを演じ、このオーラスも圧倒的な配牌差を追いつき、五分のめくり合いに持ち込むことができている。

お願い…!もう1回だけでいいから…!

 

 

その願いも空しく、たろうのアガリとなった。

高宮にとってはまたしても1牌が遠い結果となってしまった。

しかしその表情は幾分晴れやかにも見えた。

勝利は遠くとも、今日は地に足のついた、見事な戦いぶりだったと思う。

4チームのポイント差は僅差なので24戦のうち、最初の12戦くらいはどこのチームも自然に打つことが予想される。

しかし終盤になるにつれ、これまでの麻雀とは違う戦い方が求められるようになってくるだろう。しかし、それでも格闘倶楽部の戦い方はシンプルだと思う。

もともとマイナスが400ptあった、いわば一度死んだ身。

寿人、前原…そして高宮は共通してリーチ抗戦をかけ、攻め続けるだけだ。

最強集団のドリブンズにABEMAS。

攻める格闘倶楽部に守る風林火山。

1回戦を見て、台風の目であるKONAMI麻雀格闘倶楽部に注目したいと思った。

——たった3回の週末を迎えただけで、Mリーグ初代チャンピオンチームは決定する。

 

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ZERO(ゼロ)

麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で『傀に学ぶ!麻雀強者の0秒思考』を連載中。

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