気持ちは非常――――にわかるが、これは逆に2人に対して失礼であり、ゼウスの凡ミス(&編集の悪意)と言えるだろう。麻雀で例えると、357のリャンカン系から5を切るようなもの。1つの打牌で2つの受け入れを消す選択はかなりの悪手になるのだ。
たろうは当事者である2人に囲まれて気まずくはないだろうか?私の心配をよそに対局は始まった。
東1局が流局した直後の1本場だった。
亜樹の7巡目
直前のをチーせず、このテンパイ。は1枚切られてしまっているが、が2枚、が3枚見えており、は待ちとしてそこそこ良さそう。を切ってリーチを打つ人も多いと思う。しかしというか、やはりというか
亜樹は静かにを縦に置いた。
このまま供託を回収する2600点のアガリも悪くないし、にかがくっつけば待ち・打点共に優秀な手になる。
アガれるか微妙な手牌では手牌を短くしたりリーチを打ったりなど、運命を危険な方向には委ねない、亜樹らしい安定した打ち回しだ。
すぐにたろうからリーチが入るも
同巡に亜樹がツモって1000・2000。
(誰が顔だけやねん)
と怒っているかはわからないが、ツモったのはたまたまの結果で、リーチに対しても押し引きを自分の手で決めることができるのはダマの利点でもあるだろう。
これまでの戦いを見て、亜樹のダマ判断が臆病に映ったこともあったが、半端な手に身を任せず、手替わりを待ちながらも、思考を放棄しないことの方が勇気を必要とするのでは…と思い直している。
一瞬の出来事だったが、亜樹の持ち味が存分に出た1局だった。
次の局。
親の高宮はこの手牌で対面から打たれたをスルーする。
マンズが伸びてのイッツー、もしくはタンピン系を睨み、より高打点を狙った選択だ。
しかしこのときが3枚打たれていた。
それならば打点上昇の幅も狭く、8巡目ということを考えるとポンして親の連荘を狙った方がよいと感じたがどうだろうか。ポンしたときとしなかったときの速度差がかなり大きい。
一方で
をポンしてバックのマンガンテンパイをいれる亜樹。
亜樹はさきほどの局ののチーテンをとらないくらいなので、鳴いたときはこれくらいの手牌が入っていることは誰もが共通認識として持っている。
というわけで場に緊張感が走った。
終盤、さきほどをスルーした高宮が
そのをアンコにしてテンパイ。
しかし亜樹の現物であるを切ってダマテンに構えた。
が合計で5枚見えており、待ちとしては愚形以下。ぶつけられる巡目ではないという判断か。
次に
を持ってきた。
はフリテンだが、さきほどより待ちとしてはかなり優秀。
しかし高宮はこれでも、待ちを拒否してを切った。巡目が深いということと、亜樹の鳴きに対する警戒心の高さが伺える。
(どこいったん?私の)
と亜樹が思ったかはわからないが、
高宮の手元へ、そのがやってきた。
ここでを止め、を切ってリーチ!
はまだ山に1枚あり、これをツモればビッグプレーになる。
テンパイしていたたろうはオリ、高宮にハイテイが回る…!
しかし流局に終わった。
高宮も生半可な手牌ではリーチをせず我慢を重ね、ここぞというところで牙をむき反撃した。
(余計なこと言うんじゃなかったなー)
とは、1人ノーテンになってしまったたろう。
迎えた2本場。