Mリーグ2018ベストオブ【滝沢和典】〜21人のMリーガー名場面集〜




Mリーグ2018

ベストオブ【滝沢和典】

21人のMリーガー名場面集

文・阿部柊太朗

 

拝啓、滝沢和典様

春風の心地よい季節になりましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。

街路樹に舞う美しい桜を見ると、あなたの美しく輝かしい闘牌を思い出さずにはいられません。

振り返るとあれは昨年の8月、Mリーグドラフト会議にまでさかのぼります。

EX風林火山から2位指名を受けたにも関わらず、そこにあなたの姿はありませんでした。

その時の気持をあなたはこう語りましたね。

「選ばれないかもしれないと思うと怖くて行けなかった」

確かにこのときのあなたはいわゆる“スランプ”と呼ばれる次期に陥っていました。その最たる例が2016年、2017年のRTDリーグ。同時期に頭角を現したライバルの佐々木寿人選手とは対照的、2年連続▲400ptを超す最下位でした。

 

そうして迎えた2018年のRTDリーグ、あなたの姿はありませんでした。

プロとして生きる道を選んだのなら、結果が出ないときに評価がされないのは当然のこと。しかしながら徐々に仕事を減らし、月の半分を家で過ごすように。そんな当時のあなたの気持ちは察するに余りあります。

あなたは当時のスランプの原因をこう語りましたね。

「戦術本に書いたことの『その通りに打たなきゃダメだ』ってなって、卓の前に自分ではなく、別の自分に縛られてしまった」

なるほど、私は過去のあなたの戦術書を読み返しました。すると”勝利への絶対条件(マイナビBOOKS 2008年)”の中で、以下のように記していました。

プロならば自分の主義主張に一貫性を持たせなければならない。

(勝利への絶対条件 まえがき マイナビBOOKS)

あなたが『縛られた』と語っていたのはおそらくこの考えのことでしょう。

戦術というのは時代とともに移り変わりゆくものです。研究が進み、打ち手のマジョリティが変化すれば、当然そこに対応していく必要があります。私は一貫性を否定しているわけではありません。あなたの素直でまじめな性格からするに、この一文を自分自身で過大解釈してしまったのではないかと思っています。

そしてこの本の中で”中盤での生牌の字牌の扱い方”について、あなたは以下のように語っています、

ここで字牌を鳴かせてしまえば、その鳴きでテンパイしなかったとしても他の必要牌も仕掛けやすくなってしまい、加速度的に自分のアガリ確率も低下してしまう。

もし鳴きが入らなかったとしても、他家が同様に字牌を絞っている可能性は十分に考えられる。この手格好から安易に字牌をならべてしまえば、他家はその字牌を絞らなくてよくなった分だけ手組が広がってしまうので、他家のアガる可能性が高くなってしまうのだ。

(勝利への絶対条件 p.151 マイナビBOOKS)

この戦術は今でも通用するものですし、非常に大切な考え方だとも思います。しかし現代の麻雀打ちの多くは、字牌のしぼりに関して寛容なプレイヤーが多くなってきました。その中で”一貫性をもって”この戦術を通すことは難しいように思います。

事実、過去のRTDリーグでは他家に対応しすぎるがあまり、手牌が窮屈になっている場面を多々見かけました。

しかし、Mリーグという世紀の大舞台。あなたは美しく舞い、躍動しました。その打ち方は過去の華麗な滝沢イズムを継承しながら、もう1歩踏み込む強さを兼ね備えたものでした。

特に私が変化を感じたのは1月15日の対局のこと。

 

あなたの親番で、園田氏から3巡目までに3副露が入ります。

そしてあなたの手牌がこちら。対面の園田氏の鳴きに対して1枚切れのと生牌のが残ってしまいました。せっかくの親番ですが、この仕掛けが入ってはオリることになりそう。そう思っていました。

しかしここでのあなたの選択はなんと生牌の切りでした。信じがたいことです。1枚切れのですらなく生牌の

しかし序盤に字牌を整理できたことで、中盤以降に押し返しの効くイーシャンテンを組むことに成功しました。恐らく今までのあなたなら、この巡目まで生牌の字牌を抱えて絞りながらオロされていたことでしょう。

ちなみにこのときの園田氏の手牌はというと――