サイレント暴君モード発動…攻めるだけじゃない瀬戸熊直樹の“逆境の凌ぎ方”【熱論!Mリーグ】担当記者:渡邉浩史郎

もしリーチを打った場合、河が変則的なことも含めては相当警戒されるだろう。トップ目の茅森は当然ベタ降りだし、2着目で親の村上もこの点差であればオーラス勝負に持ち込んで降りてしまうかもしれない。そう考えるとこのリーチはけっこうアガリ率を落としているのではないだろうか。

もちろんリーチのメリットとして、使われにくいで出アガリできるというものがある。しかしこのはすでに一枚切れである上に、ミニマム2600の点数の場合がある。これではオーラス沢崎の満貫ツモ条件が残ってしまう。

つまり、

「リーチを打ってしまうとアガリ率が落ちるうえに嬉しくないアガリのパターンもいくつか存在するが、ダマテンにすることで残り一枚のツモ以外は嬉しいアガリのパターンのみになり、かつへのケアが薄れることで出アガリ率が上がっている」

といえよう。

実際にこの選択が数学的に正しいのか間違っているのか、正解は筆者にはわからないし、恐らく視聴者の皆さんも分からないであろう。

仮に数学的には間違った選択であったとしても、村上・茅森・沢崎との対人ゲームとして見れば合っているのかもしれない。もちろんその逆もある。

もしかしたらこの選択は、今日のような逆風吹き荒れる中で瀬戸熊の経験則が導き出した、”逆境の凌ぎ方”の一つなのかもしれない

瀬戸熊はこの局、の出アガリこそ逃したものの、狙い通りにダブで5200の出アガリとなる。

【南4局】

恐らく一番話題になったのはこのシーンだろう。

オーラスの親でこの形。ここから瀬戸熊は……

を切った。

ラス親でこの手牌を狭める選択。結果としてこの局、瀬戸熊はマンズの横伸びを捉えることなくノーテンで終局した。

これもおそらく点棒状況によるものなのであろう。沢崎の満貫ツモは耐えうるが、満貫直撃はダメ。瞬間なにかしらの安牌候補を持っておこうという判断だ。

この局単位で考えれば弱気な一打と思われるだろう。しかし、瀬戸熊は半荘単位で物事を考える。

での8000放銃や中筋での放銃、良形だらけのところから張らずに引かされる当たり牌。

「とにかくこの半荘は煮え湯を飲まされてきた。そしてオーラス、2着やトップよりもラスが近いこの状況、前局の選択がよかったとはいえ、油断していたらラスに落とされるぞ」

沢崎からリーチが飛んで来たら、ベタ降りも辞さない。ここは3着を死守する。そういう思いが感じられる凌ぎの一打だった。

最終結果は御覧の通り。

あわやのラスも十分ありうる席での麻雀を、しっかり3着で凌いだ。

瀬戸熊といえば暴君の異名や必殺のKKT(クマクマタイム)など、怒涛の攻めが持ち味の選手だ。しかしいつも攻めてばかりいては大勝ちもするが大負けも多くなる。そうなると結果としてポイントを重ねることはできない。

瀬戸熊は自身のプラスしたポイントを減らさないために、前回の大トップを意味あるものにするために、今回は「凌ぎ」の麻雀を選択した。

皆さんの目に今日の瀬戸熊の麻雀はどう写っただろうか?

筆者にはどうにも嵐の前の静けさのように思えてならない。こういう時の瀬戸熊はそれはそれは強いのだ。

暴嵐セトクマの雷電が轟く日は、すぐそこかもしれない。

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