誰かの肩が死ぬまで…
百恵ちゃんの麻雀修行時代
女流プロ雀士
【百恵ちゃんのクズコラム】
VOL.10
前回までの「百恵ちゃんノート」
一貫性
百恵ちゃんはお父さんが大好きだ。
「お父さんに早く会いたくてつい急いじゃって、、」
と差し出した29キロオーバーの1万8000円の違反切符を渡しても
「これが本当の親かぶりだな」
と笑って支払ってくれるお父さんが大好きだ。
「お父さんのお金で食べる焼肉が一番おいしいよ」
と言って高級焼肉店で特上カルビを頼み続けても
「おまえは本当に俺の娘だなぁ」
とニコニコしているお父さんが大好きだ。
高校生の頃、詐欺についての授業を受けた時、先生が
「架空請求、水増し請求、振り込め詐欺、これらは田渕がお父さんに対してやっていることとほぼ同じです」
と説明しだしたこともあったくらいに百恵ちゃんのお父さんへの甘えっぷりは周知の事実だった。
今でもお父さんに連絡する時は大抵欲しいもののURLを添付するのだが最近ついに
「買うけどさ、一体何歳になったらやめてくれるんだ?」
と言われてしまった。百恵ちゃんはすごく悲しい気持ちになったが
「絶対にやめない」
としっかりとした口調で答えた。百恵ちゃんの目が黒いうちはお年玉をもらい続けると決めている。なぜならお父さんもおばあちゃんに事あるごとにお金を振り込んでもらっていることを知っているからだ。
いぬのきもち
破天荒なマイちゃんもエリーのことだけは恐れてた。
しかしいつもはガルルガルルと全世界を威嚇していたエリーが片足をひきずりながら
「クゥン、、」
と困り顔で寄り添ってきた日があった。百恵ちゃんは本気でエリーが死んでしまうと思った。怖くて悲しくて動揺してしまい、いつもは欲しがっても絶対にあげなかったピザをあげることにした。今思えば完全に殺しにかかっている行為なのだが当時はエリーがどうしたら元気になるかを考えに考えた末の行動だったのだ。
クゥンクゥンと鳴きながらゆっくりと食べたピザが三切れ目になったあたりで
「あれ?」
とは思ったのだがもしかしたらエリーの最後の晩餐になるかもしれないと思い、百恵ちゃんはピザを与え続けた。
そしてお父さんとお姉ちゃんに迎えに来てもらい、動物病院に連れて行ってもらった。獣医さんの診断を聞くのが怖くて病院の中には入れず百恵ちゃんは泣きながら車の中で待っていた。
しかし予想に反してエリーは元気に帰ってきた。お姉ちゃん曰くエリーはおしりに体温計を刺されてブチ切れてからは元通りになったらしい。
実はエリーの前にも先代のゴンという犬がいた。元々の飼い主のおばぁちゃんが亡くなってしまって保健所に保護された老犬だった。老犬なので引き取り先も見付からず不憫に思った保健所のおじさんが引き取り、社宅で内緒で飼って殺処分を免れていた犬だった。その話を聞きつけた田渕家がゴンを引き取った。田渕家にもいいところはあるのだ。お姉ちゃんが強く抱きしめると歯が折れてしまうほどヨボヨボの犬だったがたくさんかわいがった。そんなゴンは飼い始めてから1年で死んでしまうのだが、百恵ちゃんは悲しくて学校を休んでずっと泣いていた。今でいうペットロス症候群だった。
そのことを思い出し
「もし本当にエリーが病気になってしまったら」
と考え始めた。そのことをお姉ちゃんに伝えると
「エリーをもう一匹飼えばいいんじゃね?」
と安定のサイコパス回答を出してきた。が、百恵ちゃんは名案だと思った。もう一匹エリーがいればお父さんの顔の傷は増えてしまうがなんて楽しい生活になるだろうと思ったのだ。
お姉ちゃんはさっそく保健所に電話をし
「保護された小型犬がいれば引き取りたい」
という旨を伝えた。
それから半年程は連絡がなかった。エリーも元気だったし何も問題はなく、保健所に申し込んだこともすっかり忘れた頃に連絡は来た。
「あのぅ、、なんていうか、、その、、田渕さんのご希望とはちょっと違うんですが、、とってもいい子で、、とりあえず見に来てください!!」
と歯切れの悪い電話だった。
(絶対変な動物紹介されるぞ…)
と思った百恵ちゃんは自宅で待機することにした。
数時間後お姉ちゃんから
「犬は犬なんだけどさ、、なんかちょっとデカイんだよね、、でもかわいそうだから連れて帰るわァ。白い犬なんだけど名前何がいい?」
という電話が入った。電話を受けながらマリオテニスをしていた百恵ちゃんは性別を聞く前に
「テレサ」
と答えた。
数十分後、
「何処の馬の骨かわからない犬もらってきちゃったぁ」