引っ越し、結婚、そして…
百恵ちゃん「麻雀」と出会う
女流プロ雀士
【百恵ちゃんのクズコラム】
VOL.9
『本を読め。そしてお酒と麻雀を嗜められる様になれば社会でうまくやっていける』
と言ったお姉ちゃんの教えを百恵ちゃんは実践していくこととなる。
1つ目の課題である読書はなんなくクリアした。
ポケモンのおもちゃを欲しがった百恵ちゃんに”日本むかしばなし50巻セット”を買い与えてきた両親のおかげで読書は大好きだったのだ。
学生時代から百恵ちゃんはかなりの読書家で一度本を読み始めると周りのことを無視して夢中で読んでしまう癖があった。
高校の授業中にも小説を読み、先生にそのことを注意されると教室から退室してまで読み続けていた。そのうち先生も諦めてしまったのか注意されることもなくなり、それどころか夜間の生徒にも図書室を開放してくれる様に取り計らってくれた。
おかげで百恵ちゃんの授業態度は更に悪化し休み時間に教室を移動する時には友達に荷物を持ってもらってまで本を読み続けていた為
『すごくダメな二宮金次郎』
という称号をもらった。
三者面談で担任の教師に
「将来どんな仕事が向いてるかな?」
という質問をしても親の前にも関わらず
「え〜全然わかんない(笑)宗教でも開けば?(笑)」
としか返してくれなかったり、百恵ちゃんは机に対してプリントを垂直に置いて斜めになりながら文字を書く癖があったのだがそれを
「お前は根性が曲がってるからな!仕方ないな!ハハハ!」
と笑い飛ばす様な先生方ばかりだったがそんなゆるやかな教育方法のおかげで学生時代に沢山の本を読むことができた。
これが今の百恵ちゃんの賢さの所以のひとつになっているのだろう。
2つ目の課題であるお酒の修行は本当に大変だった。
今でこそ
『ビールは1日3リットルまで』
と偉そうに言っている百恵ちゃんだが元々は相当な下戸でチューハイ1缶で記憶をぶっ飛ばし、寝てしまうほどだった。
しかしそんな百恵ちゃんをお姉ちゃんは甘やかさなかった。吐いては飲んで寝ては起こされ吐いては飲んで寝ては起こされ、今思えば本当によくお酒を嫌いにならなかったと思う。
もう1デシリットルも飲みたくなくて泣いてしまった夜もあった。それでもお姉ちゃんは許してはくれないのである。そんな時は最後の手段としてモーションだけ飲んだフリをして全部垂れ流していた。なので修行中はよく服がべちゃべちゃになっていた。
そんな鬼畜な訓練を受けた百恵ちゃんは無事にシャンパンをラッパ飲みできるまでに成長した。
おかげで百恵ちゃんの五臓六腑はギッタギタである。
そして3つ目の課題である麻雀だが、実は正直言って全く乗り気ではなかったし最後までやりたくないと嫌がった。
百恵ちゃんはかなりの負けず嫌いで当時からジャンケンで負けただけで舌打ちしてしまう位に負けることにストレスを感じていた。
テレビゲームで負けそうになると負ける直前に電源を落としていたし、部活の大会で負けてしまった時は悔しくて悲しくて既に高校生になっていたにも関わらず顧問の先生の膝でずっと泣いていた。
とにかくジャンケンだろうとあっち向いてホイだろうと百恵ちゃんは何一つ勝負事に負けたくなかったのだ。
麻雀は
“何十年も前からある難しいゲーム”
という認識だった。そんな難しいゲームをずっとやっている玄人の人たちと戦って楽しいはずがない、と思っていたのだ。
しかしお姉ちゃんは田舎で麻雀をする為にいつもメンツを探していて、妹は格好のメンツ候補だったため、時には優しく、時には怒り狂って麻雀を覚える様に詰めて来た。
長い説得の末、百恵ちゃんは麻雀を始めることとなった。
イーソーとイーピンを間違える癖はなかなか直らなかったが、徐々に麻雀にのめり込んでいった。負けることには慣れたがやっぱり悔しかったので一人でゲームセンターに行き、オンライン麻雀ゲームでこっそり訓練を積んだ。
田舎のゲームセンターは家族や友達同士で遊びに来る人が主だった為、そこに若い女の子が一人で舌打ちをしながら麻雀ゲームをやっている姿はなかなか異様な光景だった。
同級生が百恵ちゃんを見かけるたびに
「今度は一体なにをはじめたんだ」
と好奇の目で見てきたが普段から奇行三昧だったのでそういった目で見られるのは慣れていたのであまり気にはならなかった。
しかしお姉ちゃんの修行は一度ここでストップしてしまう。刺激の少ない田舎で過ごしていることに飽きてしまったのだ。
そうして百恵ちゃんは心機一転、生まれ育った街から120キロ離れた苫小牧市に引っ越すことにした。
そのことをマイちゃんに伝えると
「じゃあウチも札幌いこっと☆」
と簡単なノリで我々は長くいた地元を離れた。
真っ白になった百恵ちゃんは