これをとっさに鳴けたということは、このを鳴く構想はある程度頭の中で組んでいたのだろう。
萩原はこの鳴きで2種の役牌を鳴いて役を作れる「ダブルバック」に構えると、次巡に朝倉が切ったもポン、茅森、滝沢が最初の1牌をツモる前にテンパイを入れる。
そして待ちをきっちりツモり、2000は2100オールのアガリを決めた。
親の2000オールは全員と8000点の差がつく、決して安くはないアガリだ。
もちろん高打点を狙えるときには狙っていくべきだが、こうした「アガれそうな手」できっちりと加点をしていくことも、麻雀においては非常に大事だ。
このアガリで、萩原は2着目と15000点以上離れたトップ目に立ち、勝利へとグッと近づいた。
その後は少し点棒が動き、オーラスはハネ満ツモ条件の滝沢が、苦しい配牌から待ちのチートイツでリーチを打って、ツモアガった。
チートイツはリーチしてツモって裏ドラが乗ればハネ満ということで、ハネ満ツモ条件で手役やドラがないときには、まず選択肢に挙がる手。
滝沢もそれを狙ってのチートイツ進行を見事に成就させたのだが、ここでは裏ドラが乗らず、萩原がトップを守った。
全員がハネ満をツモるという大物手の応酬となった試合だったが、その中で最終的にものを言ったのが、萩原のポンの仕掛けによる加点だった。
ああいった仕掛け、いわば「奇襲」を見せたことで、今後の萩原の鳴きに対する周囲の評価も、変わってくるかもしれない。
ちなみにオーラスのリーチの場面、もし滝沢に裏ドラが乗っていれば、パイレーツは風林火山とのポイント差をさらに48.4ptも詰められていた。
また、1/21の1戦目でも、オーラスの和久津晶(セガサミーフェニックス)のリーチに裏ドラが1枚乗っていれば和久津が逆転トップ、小林剛(U-NEXT Pirates)は2着に落ちていたところだった。
この試合も含めると、パイレーツは直近で2度裏ドラに救われた、という格好だ。
今後は、裏ドラ1枚がチームの明暗を分ける、「最後は神頼み」というようなシーンも増えてくるはずだ。
ただ、Mリーガーたちはそこに至るまでに、さまざまな技や思考を駆使して良い結果を引き寄せようとしている。
この日も、先制を取られながら手を組んで押し返し、アガリを目指す選手たちの見事な打ち回しが数多く見られた。
チームの浮沈を背負う選手たちによる情熱と技術が融合した麻雀は、これからさらに、目が離せない。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。