熱論!Mリーグ【Mon】
サクラナイツ、強すぎだろ!
チームを鼓舞する
内川幸太郎の
闘志あふれるタクト
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2020年3月23日
セミファイナルシリーズが想像以上に早い。先週に始まったと思いきや、もう折り返し地点を迎えている。こうもあっという間だと1戦1戦が重くなるため、「あの時にラスじゃなければ」と悔やむことが多くなるだろう。選手たちの重圧は計り知れない。
1戦目は近藤誠一がチームに初トップをもたらす勝利を収めた。あのスルーからの跳満アガリは、よほどの達人か素人じゃないとできないのではないかと書くのはオーバーだろうか。ただ、近藤がどっちなのかは言うまでもないだろう。
2戦目の出場選手はこちら。
南家 近藤誠一(セガサミーフェニックス)
北家 石橋伸洋(U-NEXTパイレーツ)
近藤はトップの勢いそのままに連投。あの濃厚な戦いを見せられたあとである。近藤以外の3人は「俺も打たせろ!」という気持ちで飛び込んでいったに違いない。プロの血が騒がないはずがない。
東1局。近藤はさっそくペンを仕掛けて索子の混一色に向かう。
内川は萬子の混一色。ドラのをどこで放すかがポイントか。
石橋はなかなかまとまった手牌だ。カンチャンが埋まれば一気に手が進む。
親の藤崎は七対子ながらイーシャンテン。最もテンパイに近かった。藤崎といえばひっそりとダマでアガるイメージがあったのだが、実はリーチ成功率も高い。ここまでは藤崎の取捨選択に注目していた。
と、そこに石橋が動く。カンを鳴いて打。前巡にを切っているのは、近藤がおそらく索子で染めていると判断し、索子待ちを嫌ったものと思われる。急所が鳴けたので好形が残った。
テンパイ一番乗りは石橋。打として待ちにとった。
この出たに近藤がポン。を切って満貫のテンパイになったが、それは石橋の当たり牌だ。
素早く石橋の手牌が倒れ、さくっと3900点を近藤から奪った。石橋といえばセミファイナルシリーズで大活躍中の選手だ。「近藤さん、この俺がいるうちはいい思いをさせませんよ」といったところか。「やっぱりあのは鳴くんじゃないですか」とも思っていたかもしれない。
東2局は親の近藤以外がテンパイで流局となる。まだ序盤で点差も微差ながら、3者が近藤を止めようとしているような感じがして胸を躍らせた。
東3局1本場。藤崎が混全帯么九を目指しつつ、うっすら国士無双がちらつく手になっている。
3枚切れだったを引いて10種そろった。ここでを切って本格的に国士無双に向かう。
を引き11種となった。いよいよ雰囲気が出てきた。残るはとドラの、そしてお好みの13種で完成だ。
藤崎の指に力がこもるようになった。
もう1枚有効牌を引けば現実的なものになる。を引いてと入れ替え。
その直後に近藤がを引いた。牌の置き方はやや荒かった。「引いちまったっ!」と声がきこえてくるかのようだった。
困ったような表情を見せる近藤。自身の手は一応テンパイなのだが、役がないのでアガるには手応えがない。
とはいえ、まだ間に合うだろうと思うのが人の世である。藤崎が手出しだったとはいえ、まだ1枚も么九牌が出ていない。近藤も一瞬を持ち上げた。しかし手を止めた。
筆者が最も印象に残ったシーンかもしれない。ここで悩むのが近藤なのだ。筆者も自分の手がどうしようもなければ、あるいは点数にだいぶ余裕があれば手を止めていたかもしれない。しかしここはまださすがにと思ってしまう。
熟考の末、を切ってテンパイを外した。もし当たったらこれまで積み重ねてきたポイントが、1戦目のトップが水の泡となりかねない。この判断に解説の土田プロは「本当に素晴らしいね。よく止めた」と称賛の声を上げた。これが強者の判断なのである。いつの日か、本当に役満をビタ止めする近藤誠一が見られるかもしれない。
さて、文章の流れは完全に近藤だったが、この局で輝いたのは内川だった。