大学時代に見た井出プロ
20年ほど前、学生時代。
青山学院大学厚木キャンパスに通っていた私はご多分に漏れず麻雀にハマり込み、麻雀店通いの日々を過ごしていた。
学業に注ぐべき時間を充てた分、麻雀の成績はかなり良かったと記憶している。
行きつけの麻雀店で近代麻雀を見ると、急行で2駅にある店の広告に「井出洋介プロ来店」の文字。
井出洋介ってあの「われポン」を解説していた井出プロじゃないか?
「憧れの井出プロと打てる」というミーハー心と「でも俺の方が強いんだろ」という謎の自信を持って、井出プロの来店日を狙って打ちに行った。
当時感じた井出プロの麻雀は一言でいうと「不思議な麻雀」
終盤、危険牌を押してないのに高い手をヤミテンでアガるのだ。
繊細な序盤から産み出されていることは今ならわかるのだが、当時全ツッパ麻雀に浸かっていた私にとって大きなカルチャーショックだった。
それからというものの私は井出プロから何か盗めないかと、月一回の来店日に極力都合をつけて通い、後ろ見をさせていただいた。
他のお客さんからしたら、麻雀中の井出プロにタメ口で話しかけるとんでもなく迷惑な小僧だったと思う。
決勝開始
そして今、その井出洋介と広いスタジオのど真ん中にポツンと置かれた卓で相対している。
感慨にふける暇などないが、それでも何か運命めいたものを感じていた。
(以下敬称略)
決勝メンバーは
東家 堀慎吾
南家 新井啓文
西家 井出洋介
北家 朝倉康心
東1局1本場
朝倉のリーチを受けた1発目。
を切れば現物で無難だが、のワンチャンスでを切って踏み込んだ。
自分がドラ2で打点十分。
4枚目のを井出が持っている可能性もそこそこある。
さらにカン待ちがツモアガり・ロンアガり共に一番期待できるという理由だ。
相手からすると私のカン待ちは盲点に入りやすい。
から、1発で現物のではなくを切ったという理屈になるからだ。
その後ドラ跨ぎのを掴み、この局は撤退。
続く東2局の親番。
早々に井出からリーチが入る。
そして堀の仕掛けにも挟まれた9巡目
チートイツドラ2のイーシャンテンに、
待ち牌としてやや優秀に映るを引く。
親でドラ2、簡単には退けない。
イーシャンテン維持の打牌の中では若干放銃率が低そうだが、
ドラ表示牌に1枚見えているでここも勝負。
さらに次巡、無スジのを掴み「行くらな1スジ」でを勝負し、
堀へ放銃。
2局連続でドラ2が成就せず逆に点棒は失ったが、トップ取りとしては良いバランスで打てている。
実はこの時点で非常に手応えを感じていた。
しかし手応えを感じたからといって手が入るわけではないのが麻雀。
勝負に行ける手が入らないまま、
井出の4000オール
朝倉の2000/4000
平時ならリーチでいいのだろう。
2,600はかなりアガれそうだし、トップ目堀の親を落とす意味も大きい。
しかしトップ取りのこの持ち点、この手を2600で終わらせて良いのだろうか?
非常に悩ましい選択。
そしてその時思い出していたもの、それは2020ファイナルの決勝で敗着となったカンリーチだった。