ゼロ・トゥー・ヒロイン!
原えりか、自ら掴もうと
したものに運命は微笑んだ。
【A・B・決勝卓】担当記者:渡邉浩史郎 2023年9月22日(金)
今年春、様々な話題を生んだ麻雀最強戦女流プロ読者アンケート。
皆さんご存じの通り、結果は篠原冴美が1位を獲得。勢いそのままに今年の最強戦に出場して優勝、ファイナルへの切符を手にした。
そしてこのアンケートの大きな反響を経て、開催されたのが麻雀最強戦2024出場枠争奪戦。
アンケート2位~9位までの女流プロ8名が来年の出場枠をかけて争うことになった。
ここまではいつもの最強戦と何ら変わらぬトーナメントだが……
新たなルールへの実験も兼ねて、本対局では延長戦システムを導入することとなった。
延長戦システムとは、下に掲載の画像と共に確認してみよう。
普段だったら南4局で泣いても笑っても終わりだが、本延長戦システムでは優勝を決める和了りが発生しない限りは無限に局が続く。
オーラスの目無し問題がなくなると同時に、トップ者も勝つためにはほぼ必ず和了りをものにしないといけない。逆転性の高いルールであると言えよう。
ほぼ、といったのは実は一つだけ抜け道があるからだ。
今回上の画像に書かれてはいないが、南4局以降の親のノーテンは通常通りゲーム終了となるルールが課されている。
つまり負けている親の聴牌が難しい場合、優勝しない他のだれかに和了ってもらう必要があるのだ。
そんな本延長戦システムのゲーム性は早速A卓にて見ることができた。
A卓のオーラス。柚花は二着目のため、このままノーテンというか和了り切れば通過確定。(延長戦システムにより、南4局以降親の和了りやめが復活)
大久保と原は普段ならマンガンクラスの和了りが必要だが、安い手でも和了って次局以降に託す選択もある。
早速原が打って出る。をポンして現状2000点くらいの手。しかしこれを和了れば一旦の危機回避が出来るし、もちろんこの手がドラ二枚引いてマンガンになってもいい。
をポンしてドラターツを払う。今ドラを重ねるのは逃さないようにしつつ、躱し手になった時に大久保が差し込みに行きやすいように打点を下げてもいいという二重取りの選択。
ドラを切っての聴牌はカンだが三枚切れ、すぐにを引いてに変化した。
これを受けて、こちらも次局につなぐ選択をしていた大久保の手が止まる。
ここからの大久保の思考を追っていこう。
水瀬も柚花も降り風味のため、聴牌しているのは原と私の二人。
→二人合わせてのツモ番は7回、自身のは4枚見えでが脇二人に収納されていそうだ。
→そして対面の原は鳴いてと落とした後、4センチの手牌から手出しの。
見えている牌の枚数から考察していくと
①スライドの可能性
と何かが手の内にあることになるため原は単騎待ち。ドラを切っていること、原の目からのノベタンが絶好の待ちに見えることから他の単騎待ち候補がなし。
②から切り
のターツ落としがあるため鳴いた時点で聴牌してなかった可能性(=今テンパイの可能性)はない。
あり得るのはのカンからと何かのシャンポン変化。
③の形
カンから
④の形
カンからカン
ここまで書くともうわかるだろう。原の聴牌の当たり牌はのどれかである。
大久保は手牌の部分を全部落とせば、ほぼ確実に1000点の放銃をすることが出来るのだ。
そしてここで巡目も関係してくる。大久保の切り番はここ含めて4回。最後は河底の切り盤となるため、余計な点数を献上することになりかねない。を切り出すのは今しかないのだ。
新システムをよく理解した大久保と原のツープラトンが、水瀬と柚花を苦しめる。
そして大久保・原・柚花にとって、生涯忘れられない一局になったであろう【西1局】。
先制リーチは原。これは和了った時点で勝ち上がり確定のマンガンリーチである。
当然放銃できない水瀬・柚花は降りるしかない。反対に聴牌するか、勝ち上がらない和了りが発生するかしないと負ける親の大久保は降りられない。
大久保の最終手番、聴牌は……