前人未到の大記録を残しても、
鈴木優はあの日の想いを胸に
闘志を燃やす
文・江崎しんのすけ【月曜担当ライター】2023年12月25日
第2試合
東家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
南家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:黒沢咲(TEAM雷電)
Mリーグ2023レギュラーシーズン114試合目。
この日、Mリーグ史に残る大記録が誕生した。
鈴木優が5連勝を達成した。
4連勝は過去に10回記録されており、今シーズンでは伊達や勝又が4連勝を達成している。
しかし、5連勝を成し遂げたのは過去5年間誰もいない。
オーラス、2着目黒沢の最後の親番を自身のアガリで終わらせにいく。
黒沢の待ちは、対して優の待ちはカン。
なんとは黒沢が暗刻にしていて、山には1枚しか残っていなかった。
捲り合いの末、最後の1枚
をツモる劇的な幕切れ。
今シーズンを代表する名シーンと言って過言ではないだろう。
会場がパイレーツカラーに染まる。
前人未到の記録を達成した気分を本人がどのように語るのか、勝利者インタビューに注目が集まった。
しかしインタビューでの優は、非常にあっさりしていた。
「たまたまトップが5回連続で取れただけで、もちろん嬉しいんですけど、それよりも年内最後の試合だったので最後はいい結果が出せればと思ってました」
当然のことながら、5回連続でトップを取っても連続でなく5回トップを取っても増えるポイントに変わりはない。
記録はもちろん嬉しいが、あくまでも大事なのはポイントといったところだろうか。
とはいえこれだけの偉業を達成したのなら気持ちも高まるのではないかと思っていただけに、冷静な姿がとても意外だった。
ただインタビューとは裏腹に、自身のYoutubeチャンネルで行われた検討配信では、胸の内に秘めた熱い闘志が垣間見えた。
優は5連勝について「こんなんじゃまだ足りない」と語っていた。
昨シーズンからMリーグに参戦した優だが、セミファイナルで敗退となった昨シーズンを非常に悔しく思っていて、その時の気持ちを今でも忘れていないという。
優はMリーグ加入前の前評判も高く鳴り物入りで参戦したが、レギュラーシーズンの成績は▲92.8ptの20位で、評判通りの活躍とはならなかった。
配信の際に明確に言葉にはしなかったが、雪辱を果たす方法は昨年行くことができなかったファイナルへの進出、そしてチームを優勝へ導くことだろう。
パイレーツは優のトップによりチームランキング1位になった。
レギュラーシーズンは丁度折り返し地点に到達したくらい。
麻雀でいえば南1局をトップ目で迎えたようなものだ。
優勢であることには間違いない。
ただ、まだ勝利を確信するには早すぎる。
去年の雪辱を果たすべく闘志を燃やす優にとって、どんな結果にせよ今はまだ通過点でしかないのだ。
冷静に、かつ闘志を燃やす優。
その姿勢はこの対局でも存分に現れていた。
高宮・黒沢の高打点が決まり、2人が先行して迎えた東4局。
優の手牌は3巡目にしてイーシャンテンとなっていた。
しかしドラが1枚あるとはいえペンチャンが2つありテンパイする受け入れは・の2種類しかない。
一旦を外しシャンテン数を戻す。ピンズがと良い形になっているので新たな面子も作りやすい。
直後、黒沢から切られたをポン。