萩原聖人の未来予想図、
鍵になるのはあなた
文・中野巧【火曜担当ライター】2025年9月23日
第1試合

東家:小林剛(U-NEXT Pirates)
南家:萩原聖人(TEAM RAIDEN / 雷電)
西家:醍醐大(セガサミーフェニックス)
北家:下石戟(BEAST X)
「考えることは一つだけ。ユニバースへの感謝」
これは試合後に本人へ「入場時に考えていることは?」と質問した答えだ。
当たり前だがMリーグはファンがいなければ存続しない。
しかし、当たり前であるがゆえに発言することは減るかもしれないし、もしかしたらうっかり伝えるのを忘れる瞬間もあるかもしれない。
実際に私も家族がいて当たり前と思い感謝を忘れていたこともある。
ただ、絶対に萩原は当たり前を忘れない。
萩原と一緒にいたとき、いつもすごいなと思わされるのは客観視する力と言葉選びの繊細さである。
今自分が何を言えば、相手にどう思われるか、というのを予想する力がずば抜けている。
それを表すエピソードとして、某Mリーガーが自身の挨拶について萩原にアドバイスを求めたことがあった。
その回答を聞いて「絶対萩原さんの言っている内容の方がよかった」と後悔交じりに言っていた。正直、私もそう思った。
実際、萩原のインタビューで感動し、鳥肌が立ったのは私だけではないはずだ。
また萩原は私にとってテレビや舞台で見ていた完全に画面の向こう側の人、つまりスターなのだ。たまたま不思議なご縁で交流させていただいているが、私はもともと萩原ファンなこともあり、いまだに会うたびに緊張し、流暢に話せない。しかし、萩原は自分がスターだとかは全く思っていない。
そんな等身大の萩原だからこそ、私のような若手に「俺は中野のこと好きだからいうけど、これはこうしたほうがいいよ」とアドバイスをくれたことがある。
私はその時、泣きそうになってしまった。それ以来、私の中で萩原は超一流の存在となった。いつも画面で見ていた人が、20以上も年下の私のために行動してくれることがどれほどうれしかったか。
萩原にとってファンも同じだ。
どうすればよりファンが喜んでくれるか、よりMリーグが広まるかを常に考えている。しかもその内容と出来上がったもののクオリティが考えられないほど高く、分け隔てがない。例をあげるなら、初年度から3年目あたりまで萩原はこれまで出演していなかったバラエティ番組にMリーグのことを話す条件付きで出ていたこともあった。
最近では萩原が直接、有名ギタリストのKen Yokoyamaさんに依頼し、雷電のチャンステーマ「RAIDEN GO」が出来上がった。今やその曲は雷電の選手発表の際など様々な場面で使用されている。応援する側もつい真似をしたくなる、初年度から続くチームポーズ(雷電ならRMO)も萩原が発案したものだ。
(2018-19シーズンのRMO)

(2025-26シーズンのRMO)
その萩原が俳優業と同じ100%の熱量で麻雀もやると宣言し、実行してくれているのはMリーグや業界にとっては大きな功績だろう。結果として「萩原さんがいたからMリーグを知った」人は私の周りにも多く、実際にいろんなアイデアでファンを楽しませてくれている。
ただ、もうMリーグができて8年が経った。いつまで萩原はMリーグにいてくれるのだろうか。
もちろんほかにも人気な選手は多く、ファンもたくさんいる。しかし、雷電ファンだからもあって私は不安になった。ずっと萩原が倍の熱量でやってくれているだけではいつか持続しないのではないかと。
そのためには選手、関係者をはじめ、麻雀プロやファンもこれより一段階上のフェーズに進み、結果的にMリーグが盛り上がることで、もっと面白いコンテンツに昇華するのではないだろうか。例えば選手や関係者はすでにどうすればファンに楽しんでもらえるかを日々考え、実践している。Mリーグに関する一気通貫ツアーはその一例だろう。
私のような麻雀プロは、Mリーグを盛り上げるためにSNSなどでそれにまつわる投稿をし、いかに注目度が高いコンテンツであるかを多くの人に知らせなければいけない。また、一般の人からみて自分たちの言動はMリーガーと同じ「麻雀プロ」という自覚をもって、一緒に応援してもらえるよう努めなければならない。
ではファンはどうだろうか。
大前提、Mリーグのみならず、スポーツや映画などは一種の娯楽である。だからファンの方はどんな楽しみ方をしてもかまわない。
もちろん、麻雀の経験や能力などはそこに関係ない。私は麻雀プロであるが、プロになる前からMリーグファンでもあり、同じファンとして考えてみた。
応援しているチームが負けたとして、相手のチーム、選手を貶めるような発言や投稿はしないでほしい。なぜなら、それを見て相手チームのファンはよく思わないだけでなく、自分が応援しているチームのファンも嫌な気持ちになるからだ。多くのファンはそんな発言を望んでいないことを理解し、自分の発言によって自分の好きな選手やチームがどう思われるか、もっと言えばMリーグ自体をどう思われるかを意識しなければいけないと思った。
同じファン目線として今日のMリーグで萩原は手が入らずどうしようもなかったが、中でもにうれしかった局をピックアップしたい。この時、私はつい仕事であることを忘れ、手に汗握り祈っていた。
それは南2局。
萩原は3着目の親番。
トップを目指すには加点をしたい場面で、醍醐から先制のリーチが入る。
待ちは–
。
放銃すれば8000点が確定する手だ。

萩原の手牌はこちら。

イーシャンテンでドラ1ある形。

ここから萩原は危険牌のを切る。アガリを見ての一打だ。

しかし、3巡後に危険牌のを引いてきてオリ。
打とした。