邪気を払い、
眠りから目覚めた王者
文・宮水さくら【木曜担当ライター】2025年11月13日
昨季、セガサミーフェニックスを頂点へ導き、自身もMVPを獲得した醍醐大。
勝負どころで見せる冷静な判断力と、一打一打に込められた精度の高さは誰もが認めるところだ。だが、王者として迎えた今季は思うような結果が残せていない。ここまでの個人成績はおよそマイナス127pt。フェニックスとしてもチーム順位は10位と、苦しいシーズンを強いられている。
それでも、チームの雰囲気を沈ませないのが醍醐という男だ。表情を崩さず淡々と卓に向かう姿勢、そしてどんな展開でも「勝ち筋」を見失わない姿勢が、チームに安心感を与えている。
第1試合
東家:本田朋広(TEAM雷電)
南家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
西家:醍醐大(セガサミーフェニックス)
北家:三浦智博(EARTH JETS)
昨季の王者がここから再び風を起こせるか。チームを浮上へと導くための、大きな一戦が始まった。
東1局2本場
静かな立ち上がりの中、醍醐にチャンス手が訪れる。チートイツドラドラのイーシャンテン。
牌姿はまだ重いが、構想次第では一気に跳満級まで伸ばせる手だ。今季なかなか結果が出ていないだけに、この手は勢いを取り戻す意味でもアガリまで持っていきたい。
しかし、親の本田が
、
を仕掛けており、トイトイやダブ
絡みの高打点が見える。
さらに、下家の三浦も鳴きを入れ、![]()
待ちのテンパイ。

醍醐の手牌には通っていない牌が3枚浮いており、攻めるなら放銃リスクも高い。
醍醐は手牌の価値を冷静に見極め、最終的にオリを選択した。チャンス手を手放す決断には勇気がいる。
打点を追うよりも、リスクを抑えて長期戦を見据える。勝負勘と読みの鋭さを併せ持つMVP経験者の一打だった。
東3局
醍醐の親番。
ようやく手がまとまり、リャンメン・リャンメンのイーシャンテン。
ここで勢いをつけたいところだったが、先に本田がテンパイを入れる。
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待ちのリーチ平和赤赤、満貫確定の先制リーチだ。その直後、醍醐の手に
がやってくる。
テンパイが入れば勝負に行く構えだっただけに、一瞬ヒヤリとする場面。
だが、本田のリーチ後に三浦が
、
をポンして![]()
待ちのテンパイ。
醍醐が引いた
をツモ切ると、三浦に1000点の放銃となった。
表面的には放銃だが、これは「耐えた」と言っていい。もしも本田への放銃であれば満貫、傷はもっと深かったはずだ。
小さな失点で親を落としたとはいえ、今のフェニックスに必要なのは“崩れないこと”。チームの重圧を背負いながらも、落ち着きを崩さない醍醐の表情は、次の反撃を静かに予感させた。
南1局
先制リーチを入れたのは園田。タンヤオ平和赤ドラドラ、マンガンからの強烈な勝負手だ。ヤミテンという選択肢もあったが、園田は迷わずリーチ。
親の本田もテンパイを入れ、2人テンパイの勝負。
結果は園田が
ツモ、3000-6000のアガリでリードを広げる。
この時点で、醍醐はトップと22,300点差。まだ親番は残っているが、形勢は厳しい。
ここで中継席の解説・河野直也から小話が飛び出す。
「醍醐さん、今日は15時間寝たそうですよ」
Abemaのコメント欄が15時間 眠りすぎだろう、というコメントで溢れていたが、裏を返せばそれほど“気持ちをリセットしたかった”ということだろう。長いトンネルを抜けるための、彼なりの調整だったのかもしれない。
そしてこの“眠り”が、後に奇跡のような覚醒へとつながる。
南2局
ようやく醍醐に本格的な勝負手が入る。
リーチ平和ドラドラ、満貫からの手。愚形のカン
から入り、![]()
待ちのテンパイでリーチ。入り目の感触も悪くない。
だが、このリーチもアガれない。1人テンパイでの流局。















