完全制圧・渋川難波
奇跡は信じる者に訪れる
文・東川亮【バックアップライター】2026年2月13日
KADOKAWAサクラナイツの4選手に対し、みなさんはどんなキャラクター象を抱いているだろうか。
ひょうひょうとしていながらも麻雀に熱い堀慎吾、感情を表に出して情熱的に戦う岡田紗佳、とにかく真摯に麻雀と向き合う阿久津翔太。
筆者個人としては、すごく真面目でひたむきなメンバー、という印象を持っている。
一方で、渋川難波は他の3人と少しキャラクターが違っている印象がある。実力者であることは間違いないのだが、イジられキャラで常に穏やか、ギラギラせず負の感情をあまり表に出さない様子は、言葉を選ばず言えば勝負師っぽくないというか。
ただ、そんな彼が今のサクラナイツを支えているのは事実。そして、ボーダーから600ポイント近く離された最下位に沈むチームにとって、彼の普段と変わらない柳のようなメンタルは、成績以上に心強いものとなっているはずだ。
第2試合
東家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
南家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:石井一馬(EARTH JETS)
東1局が終盤に差し掛かろうという11巡目、渋川は
をポンすればタンヤオのテンパイを取れる牌姿だったが、スルー。しょせん愚形待ち1000点の手で、出ていくのは生牌であるドラの
。リスクとリターンが見合わない、という判断か。
この判断が功を奏する。門前でテンパイし、
単騎待ちでリーチ。十分戦える待ちと打点に仕上げると、
自らツモって2000-4000。まずは渋川が先行する。
東2局には一馬の巧みな手組みによるハネ満ツモを親かぶってしまうが、迎えた東3局には、ピンズのツモをキャッチして一気にホンイツへと寄せていくと、
カン
チーでテンパイから、すぐに寿人から出アガリで8000。着々と加点していく。
そして圧巻だったのが東4局。この局もホンイツが見える手をもらって、序盤にいきなり![]()
のリャンメンターツを落としていく。相手からしたらかなり嫌な切り出しに見えるだろう。
上家の茅森は1牌も鳴かせないよう対応していくが、自力で引いてしまえば問題なし。ドラ
を暗刻にして、![]()
![]()
待ちの変則3メンチャンでテンパイする。自分で8枚使っており、決していい待ちというわけではないが、リーチしてツモれば三暗刻もついて三倍満まであるという超大物手。ダマテンでもツモれば倍満、出アガリ安目ハネ満からと打点は十分なので、渋川はリーチとはせず。下家の寿人がテンパイ模様で、渋川に対してひるんでいないことで、出アガリも期待できるという判断もあったようだ。
寿人に加えて一馬もテンパイを入れていたが、競り勝ったのは渋川。ツモ
ホンイツ三暗刻ドラ3、4000-8000のアガリで他3者を大きく突き放した。
バックの寿人はともかく、一馬としては待ち取り次第でこのアガリを防ぐ結末もあり得ただけに、かなり痛い結果となってしまった。
東場では積極的なホンイツ進行で高打点を決めた渋川だが、南場に入ってからは違う面を見せた。
南1局は
ポンからの速攻を決め、1000点のアガリでまずは茅森の親番を潰す。テンパイ打牌の
を残してピンズを外せばマンズのホンイツ1シャンテンという手ではあったが、染めても3900止まりと、状況的にはそこまで魅力的な手でもない。であれば目の前の良形テンパイのほうが優先だ。
南2局は茅森のリーチに対し、1シャンテンからスジの
で放銃。自身のアガリを見つつ、放銃してもそこまで大きな痛手にはならなさそう、という判断か。ここを1300点の失点で流すのは渋川にとっても悪いことではない。
南3局は2600を寿人から出アガリ、そしてオーラスも
ポンからリャンメンテンパイにたどりつき、一馬から1000点を出アガリで勝負あり。
最短8局、わずか45分程度で終わった試合は、まさに渋川オンステージ。東場で稼いで南場は局消化というゲームメークのお手本のような進行で、自身の親番以外の6局は全て自身でアガりきってしまうという、Mリーグでもちょっと記憶にないような快勝だった。
試合全体を細かく見ていけば、他にも語るべきところはあるのだと思う。ただ、結果としては渋川がただただ主導権を握り続けた試合だったと言える。そこで他の選手の麻雀を取り上げるのも少し脱線気味になりそうだったので、今回の記事は渋川視点でロックさせていただくことになった。
もちろん、このトップでサクラナイツの状況が劇的に改善されたわけではない。最下位を脱出したとはいえ、ボーダーとは500ポイント以上離されており、レギュラーシーズン突破はまだ極めて難しい状況にある。しかし、こういう試合をやればいい、というお手本のようなゲームを渋川が見せてくれたのは、今後のサクラナイツにとっては大きいだろう。もちろん恵まれた要素も大きかった試合ではあったが、勝ち筋をイメージできるかできないかは、やはり大違いだ。
何より、まだ22試合が残っている。渋川は「チームはまだ誰も諦めていない。一丸となって、ここから通過したら奇跡の通過なので、奇跡を目指して頑張っていきたい」と、この日の戦いを締めくくった。奇跡は、信じた者にしか訪れない。果たしてサクラナイツは、サクラの季節まで生き残ることはできるのか。

さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。















