涙の先で 永井孝典
文・後藤哲冶【月曜担当ライター】2026年3月23日
先週のことだった。
MVP争い天王山。BEASTXの同じく新人選手の下石戟との直接対決で、永井は大敗し……。
その重圧からか、対局後永井の瞳は静かに揺れていた。
詳しくは、その日の観戦記を読んでみて欲しい。
知っている人も多いとは思うが、永井はつい最近まで、サラリーマンとして働いていた麻雀プロだった。
大舞台を経験したこともない、関西の気の良い兄ちゃんだったのだ。
「1年前まで自分がこんなことになるなんて、夢にも思わなかった」
永井はかつて、そう語ってくれた。
そんな永井だからこそ、ここ数ヶ月のMVPへの重圧は、人生初めての経験だったであろうことは想像に難くない。
そしてそれから5日が経って。
永井は吹っ切れたような表情で入場シーンを迎えた。
確かにあの大敗で、猛将の鎧はボロボロになった。
MVPレースから大きく離された。
それでも、快く、もう一度行ってこいと言ってくれたチームのために。
永井がもう一度鎧を身に纏い、戦場へと降り立った。
第1試合
東家:竹内元太(セガサミーフェニックス)
南家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:永井孝典(EX風林火山)
永井が吹っ切れた要因の一つに、この男の存在があった。
竹内元太である。
永井と元太はお互いがMリーガーになる前からの旧知の仲であり……。
仲の良い、先輩後輩だった。
永井は前回登板から今日を迎えるまでに一度、元太と会っている。
その時に元太から「前回の結果は残念だったけど、こんなMVP争いができる終盤戦を戦えることはなかなか無いから、この機会を楽しまないと損だよ」と、笑顔で言われたという。
そのあとには、愛のある弄りもあったようだが……閑話休題。
とにかく、そんな背中を押してくれた先輩である元太との直接対決というのも、永井にとっては吹っ切れる要素になったのかもしれない。
目の前で不甲斐ない姿は見せられない。
もちろん、対局に入れば真剣勝負。
それは永井も元太も、理解している。
序盤リードしたのは、現在13勝で最多勝と個人3位に位置する格闘俱楽部の滝沢だった。
親番で綺麗に仕上げたメンタンピンを岡田から一発で捉えて12000。
このままでは、滝沢に勝利数で抜かれ、そして個人2位の座も危うい。
しかし永井に、焦りはなかった。
東3局2本場。
ド終盤にピンフのみのテンパイで、果敢にリーチへ。
これには理由があった。
親番の岡田が直前に
をポンしており、これがかなり形式テンパイの仕掛けに見えたこと。
だからこそ、ここは強気にリーチと行きやすかった。
結果的に岡田をハイテイ手番で降ろすことに成功し、1人テンパイで流局。
的確な状況判断で、親番を迎えた。














